天井裏
□Pure Letter
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電話の代わりに
手紙を書きます
……逢いたい…夜は
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【PURE−LETTER】
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―――【不在】
「…今日もすれ違いだな……」
最近、顔を合わせる暇すらなく……携帯ですら留守電。
仕事が立て篭もっているらしく、夜遅くに鳴り響くコール音を待ち続ける日々が繰り返されていた。
(別に寂しいとか…そんなんじゃないけどさ…)
長い検事局の廊下を戻りながらブツブツと呟く。
こんなに長く逢えないのは最近では珍しい方だった。多い時はほぼ同じ時間を共有していたし、すれ違いに至っては二日程だったから。
ところが…今回に至っては一週間になる。
4〜5分程の電話は毎晩あったが、疲労めいた声が非常に気の毒で…。
『落ち着いたら電話してくれればいいよ。』と、気持ちとは真逆な事ばかり話していた。
また、一方の御剣に至っては…
【君は、変わり無いだろうか?】
【困り事や悩み事は…】
と、身を案じてくれる言葉だけを繰り返していた。
余りにも毎晩同じ台詞だから、…実はこれ録音したやつなんじゃないか?等と訝し気に聞いていた時もあった程だ。
(どうしよう…コレ)
不在でなければ、捨てるつもりでいた手紙。
青いスーツのポケットに、小さく折り畳んだ…手紙というよりはメモに近かったのだけれど。
昨夜の電話の後に、何となしに書いてしまった。
メールでも良かったけれど……口頭や電子メールでは伝えきれない何かを、手紙は伝えてくれそうな気がしたのだ。
(一度は…ここに戻って来るんじゃないかな…几帳面だから…御剣は。)
キョロキョロと辺りを見渡して…その扉の隙間に、そっとそれを差し込んだ。
廊下はしん…と静まり返るだけ。
在るのは自分の溜息と、ロビーへと引き返す自分の足音。