オリジナル

□lonely bird
1ページ/7ページ

夢を見た

両親が居て、姉と弟が居て
嬉しそうに皆で笑い合う夢
とても暖かい夢

暖かいが故に冷たい、『夢』



「ねぇ、キリ…またあの夢…見たわ。」

灰色の胸まである髪とモノトーンのワンピースを風に靡かせた少女。
藍色の瞳を遠くを見るように細め、唯一色がはっきりしている赤い唇は、哀しげな笑みの形に歪められている。
紅に染まりゆく空に、黒っぽい色が基調のコウの姿はとても目立つ。
まるで、一枚の絵を見ているかの様に、洗礼された光景だ。

「…大丈夫だよ、コウ。僕がずっと傍に居るよ…」

後ろからそっと、しかし強く、少女を抱く少年。
耳が隠れるほどに伸びた亜麻色の柔らかな髪が、風に揺れている。
辛そうに閉じられた瞼の下には、大人しそうな中に、意志の強さが滲む紅の瞳がある。
キリと呼ばれた少年は、栗色のパーカーの下に白のTシャツと、カーキのスラックスを着ている。

「だから泣かないで、コウ。」

声変わり前の高めの声で囁く。

泣いてなんかいないわ。
ただ、少し胸が痛むだけ

コウは、親の顔を知らない。
生後間もなく、キリの家の前に捨てられていた。

キリの両親は優しかった。
見ず知らずの少女に、その名と居場所を与えてくれた。
キリと、兄弟のように育ててくれた。

それでも埋まらない、この孤独感。

明らかに他人であると見せ付ける、髪や瞳の色の違い。
その寂しさが、あんな夢を見せるのだ。

「大丈夫よ。私は一人じゃないって知ってるから。」

嘘。私は一人。

「キリと、小父様と小母様が居て…」

父母と呼べって?
心からの言葉じゃないくせに。

「大好きよ、みんなが。」

一方的な愛よ。本当は誰も私を愛していない。

「血は繋がってなくても、私達は兄弟。キリが居てくれるから、大丈夫よ。」

ふわりと微笑んで、立ち上がる。

「帰りましょう、家に。」



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ