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□一寸先の黒き蜜
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「クロスティ、気分が優れないんだって?」
「ルウィッシュ様、公務はどうなさりましたの?」

クロスティの寝室に、ルウィッシュが顔を出した。
彼には次期皇帝としての仕事が沢山あるはずだというのに。

「休憩くらいはさせてもらえるからね。それで。」

悪戯っ子のような、しかし人の良い笑顔を零す。

「調子はどう?」
「ルウィッシュ様の顔を見たら、よくなりましたわ。」

にっこりと笑う夫婦に、女医が近付いてきた。

「クロスティスタ様……」

頭を低くしたまま、女医が名を呼ぶ。言外の意味を多大に含めて。

「えぇ、自分で言いますわ。」

クロスティスタは表情を変えない。
いつもの穏やかな笑みのままだ。
一方の女医の表情は影になり見えない。

「ルウィッシュ様。落ち着いてお聞きください。」

背筋を伸ばし、真っ直ぐにルウィッシュを見つめ、その口を開いた。



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