スパイラル

□type of happiness
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「どういうつもりだ、カノン。」

銃の整備の為、油臭くなったカノンの部屋に、アイズがやってきたのは、彼が日本へと発つ少し前の事だった。

「そのままだよ、アイズ。」

銃に目を落としたまま答える。
アイズの声に、焦りが出てきた。

「何故ハンターなどにまわるのかと聞いている。」
「何故と言われてもね。そう決めたんだよ。」
「お前は、俺達を見捨てるのか…!?」

喉の奥から、懸命に声を絞りだしているのが判った。

――それでも

「君達を見捨てたんじゃない。もっと大切な想いが生まれただけだよ。」

「同じだ……カノン…」

声が小さくなっていくのが判る。
その顔には、自嘲の笑みすら浮かべている。

同じだ、カノン
お前は

俺達を見捨てる
俺達を裏切る

それが何を意味するのか

解らない
考えたくも、ない

信じたくないんだ

お前と殺し合わなくてはならない事

そんな未来が近い事

見たくなんかない

それでもそれは、抗えない事なのか?

それもまた、巡る運命の輪の一つなのか?

もし、そうだと言うのなら
お前が敵にまわると言うのなら

「カノン、頼みがある。」

俺は、

「どうしても、ハンターにまわると言うのなら。」

この世界から、

「俺を……殺せ。」

消えてしまおう



「…冗談にしては、質が悪いね。」

ようやく、顔を上げて此方を見るカノン。

「冗談では無い。」

沈黙が肌に突き刺さる。

「僕が応じると思う?」
「だが、お前が考えを改めないなら何時か殺し合うだろう。」
「君が考えを変えるって、手もあるんだけどね。」

苦笑いを向け、片付けを始める。

「アイズ、答えは『NO』だよ。」
「…冷たい男だ。」
「うん、そうだよ。」

片付けを終えて、立ち上がる。
横を抜けられる時、手を伸ばしそうになった。

行くな、カノン。

そう言って、引き留めたくなる。

「…じゃあね、アイズ。」

ドアが閉まる音が、乾いて聞こえた。



「は、はは…」

自嘲の笑みが、自然と零れ出る。

「簡単には…楽にさせてくれないと?」

膝が力を無くす。
光が消えた瞳に映るのは、幸せだった頃の欠片達(オモイデ)。

お前と殺し合うくらいなら
死んでしまいたい

解っているから

俺が死ねば、お前が壊れる
お前が死ねば、俺が壊れる

それでも、お前の死んだ姿など見たくない

「神は、見ているものだな…」

その傲慢さ故に、望むものは与えないと、そう言われているようで。

「なぁカノン…お前は……」

お前は、俺に壊れろと言っているのか……?




「…ごめんね、アイズ。」

さようなら、アイズ

僅かな時間だけ

「待っててくれると思うのは…傲慢かな。」

それでも、待っていて
必ず帰るから 変えるから

僕達が幸せに暮らせる世界を引き連れて、帰るから

二人だけの、世界を――…





―終―
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