R-Dream

□あるしあわせな日
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スプリングの痛んだおんぼろのソファーに座り、手元の文庫本に視線を落とす。
正確に言うと座っているのはフラッシュマンの足の間であるが、田中は特に気にした風も無く大人しく本を読んでいる。
田中の肩に頭を乗せたフラッシュマンは大して面白そうにない顔をして、それでも活字を追う。

残りのページは、あと僅かだった。

やがて一冊を読み終えた田中は天井を仰ぐと一つため息をついた。

「面白いのか?」
「まあまあ」

フラッシュマンが肩から頭を避けると田中は背筋を伸ばし、背後の彼にもたれかかった。
2、3度まばたきをすると目を閉じ、瞼を揉む。
ぬくもりのない装甲がひやりとして心地良く、ともすれば眠ってしまいそうだ。
はあ、と幸せなため息を吐くと頭上から声が降る。

「寝るなら部屋で寝ろよ」
「うん、もうちょいだけ待って」

揉んでいた手を離し、だらりと下ろすとフラッシュマンがその手を取った。

手の甲を眺め、掌を軽く押し、指を一本一本見つめていく。
時折押される指の腹や掌がくすぐったい。

親指に戻りまた指の腹を柔々と揉みしだいていく。
最初こそくすぐったさを感じたものの、マッサージを受けているかのようなゆるりとした刺激に段々と心地良さを感じ、つい瞼を閉じてしまった。

「おい、寝るなよ」
「ん。まだ起きてるよ」

体温が移り温もりを帯びた装甲。
同じように温度を得た白い指。

「…しあわせだねえ」

ふにゃりと緩みきった顔でまた一つ溜息をつくと、引き寄せたフラッシュマンの手に軽く口づけた。

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