R-Dream

□悪戯
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新雪に足跡を刻むのに似た高揚感を味わった。


悪戯




数日がかりで一仕事を終えて帰宅したフラッシュマンはE缶目当てに台所へと向かっていた。
久々に些かハードな仕事だったためか、もうヘトヘトである。
早くエネルギーを補給して一寝入りしちまおう。
そう思うと知らず足も速くなる。
疲れからくる苛立ちのせいかドアを開けるのも面倒になり、つい足蹴にしてしまった。
これをワイリー博士や田中に見られると小言を貰うことは目に見えていたが、それぐらいはまあいいだろう。
バタン!という派手な音の後に聞こえたのは、ひゃっ、という田中の情けない悲鳴だった。
大方クロスワードをやっている途中にテーブルに突っ伏して居眠りでもしていたのだろう。
寝ぼけた瞳のまま驚いた顔で自分を見ているその姿にハッ、と少し馬鹿にしたような笑みを見せると目を擦りつつ、やはり小言を漏らした。

「ただでさえボロボロなのに、壊したら誰が直すんですかね」

気持ちよく眠っていた妨害をされ不機嫌になったのか上目遣いで睨む田中、しかしそんなものがフラッシュマンに効くはずも無い。

「へいへい、わかりましたよっ、と」

またも小馬鹿にしたような返事をされたので田中はムッとした顔のまま再びクロスワードに手をつけた。
それを見たフラッシュマンは冷蔵庫で目当てのモノを手に入れるとすぐにE缶でエネルギーを補給した。
あっという間に缶は空になりグシャリと握りつぶされ、ゴミ箱に放り込まれた。
長居は無用、とばかりに踵を返そうとしたが、田中がやけに静かなことに気が付いた。
平生なら仕事はどうだったとか他愛も無い会話を交わしたりからかったりしているだけにやや物足りなさを感じ、再びテーブルに目をやった。
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