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□75.シーツ
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75.シーツ


 気温、29.7度。
 まさに絶好の洗濯日和だと田中は抱えていた洗濯カゴを下ろし、額を伝う汗を拭った。
 白のタンクトップにオレンジのオーバーオールをだらしなく着崩し、頭にタオルを巻いたその出で立ちはともすれば少年のように見えてしまうが田中本人は特に気にせず、好んでその格好をしている。
 木の枝から枝へ張られている物干しの紐に干された真っ白いシーツを洗濯バサミでとめ、籠の中にある次の洗濯物に手を伸ばした。
 水分を含んだ布は冷たく、夏の日差しを受ける手には心地よい。
 パン、とシャツや白衣のシワを叩いて伸ばしサクサクと洗濯物を干していった。
 手元と洗濯籠の間を行き来する田中の視界には背後から忍び寄る青い影が映っていなかった。

「ひゃっ!」

 落とした洗濯バサミを拾い上げ屈んだ体を起こした時首筋に感じたひやりとした刺激に情けない叫び声を上げると同時に、握っていたプラスチックの洗濯バサミもパキンと悲鳴を上げる。
 何も持たない手で首筋を触り後ろを振り向き眉をひそめた。

「いや、びっくりした!洗濯バサミ壊れちゃったんだけど」
「どうせ百均のだろ」
「まあそうなんだけどさ、あーあ」
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