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□馬鹿野郎二人
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「おい馬鹿野郎」
「なんだい千秋?いきなり」

 おじさんと藤岡が帰って、私は夏奈、もとい馬鹿野郎に話しかけた。
 夏奈は馬鹿といわれたからなのか、アヒルみたいな口をしてこちらを振り返る。

「だいたい、姉に馬鹿野郎はないだろう。
 もっと敬意をはらって話しな」
「残念ながら、馬鹿に払う敬意は持っていないよ」

 余りにも下らない切り返しだったので、一言で黙らせた。
 話を長引かせるのも面倒だからな。

「――というわけで、単刀直入に聞く」
「頭の会話を台詞に反響させるんじゃないよ」
「うるさいよ」

 だから話を長引かせるなって。

「――お前は、藤岡をどう思っている?」
「番長」
「たった一億円かよっ!?」

 ――しまった、余りにも速答されたからツッコミ間違えたよ馬鹿野郎。
 あーもう馬鹿野郎。
 馬鹿な野郎だよこいつ馬鹿野郎。
 質問の根本的な理解をしていないよ。

「……ごめんよ、馬鹿野郎には難しすぎた質問だったね。
 じゃあ藤岡のこと、好きか?」
「……普通、だよ」

 ふむ、流石に馬鹿でも理解できたか。安心安心。
 しかし、夏奈よ…。

「………」
「な、なんだよ?」
「――はぁ」

 呆れてため息がでるよ、全く。

「――お前、実は気付いてただろ」
「な、何をだよっ!?」
「未来の旦那」
「―――!」

 何を驚いた顔してるんだよ。
 そんな口をパクパクさせて気持ち悪い。

 そんな姉にため息をついて、私は言った。


「――敬意をはらってほしかったら赤い顔隠せ、馬鹿野郎」


 お前がおじさんの胡散臭いペン占いの結果に喜んでるの、丸分かりなんだよ。
 自分の感情ぐらいコントロール出来るようにしとけ、馬鹿野郎。




 ――まぁそんな姉が好きな私も、十分馬鹿野郎か。



 ……な、なんだよ馬鹿野郎。




end





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