ヒナの使い魔
□第二章
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「ん……」
ヒナギクが目覚めて、初めて目にしたものは、信じられない光景だった。
「な、なにこれ…」
それは、部屋の中がとても綺麗になっていたことであった。
その証拠に、ピカピカに磨かれた机に、健やかな朝の太陽が反射して、眩しい。
「あ、起きましたか」
私の部屋はこんなに綺麗だったかしら?
覚醒仕切れていない頭でヒナギクが考えていたところに、声が掛けられた。
ぼけー、とした眠り眼で声の方を向くと一人の男の子が。
「……誰?」
見覚えがなかった……ような気がした。
「おはようございます。
…ってヒナギクさん?貴女から呼び出して『誰』はないでしょう」
「………あぁ!ハヤテ君!」
頭も漸く回りだし、ヒナギクは思い出した。
人間の使い魔という世にも奇妙なこの少年は、昨日自分が召喚した使い魔だったではないか。
「酷いですよ、全く」
「あはは。ごめんごめん」
頬を膨らませ睨んでくる使い魔、もといハヤテに苦笑しながら謝罪を述べる。
「もう……」
やれやれ、とハヤテは肩を竦めると、箪笥に手を伸ばし、
「授業が始まります。早く着替えてください」
着慣れた制服を渡された所でヒナギクは漸く昨日の記憶が完全に戻って来た。
「――そうか。私、掃除と洗濯をお願いしたんだっけ…」
ポン、と手を叩いてハヤテを見れば、ハヤテはもう一度、やれやれと肩を竦めていた。
そんな、ハヤテの使い魔初日の朝。
――第二章【ゼロの理由】