ヒナの使い魔
□第五章
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さて、早いもので、ハヤテがトリステイン魔法学院でヒナギクの使い魔ライフを始めてから一週間が経った。
やや不安に思っていた生活も、実はそれほど困難でもなかった。
簡単に説明するとだ。
まず、世の中のほとんどの動物と人間がそうであるように、朝起きる。寝床はヒナギクのふかふかベットのため目覚めはかなり良い。
毎朝、隣で眠るヒナギクの寝顔を見ないかぎりは円滑に行動出来るのだ。
ただ起床時間がヒナギクよりも大分早く、使い魔として義務付けられている(とハヤテが思っている)洗濯、掃除をする。
まぁハヤテは家事はべらぼうに上手いので何事も問題なくこなせる。
唯一を言えば洗濯の際にヒナギクの下着を極力見ないようにすることだろうか。
部屋の掃除、衣類の洗濯を終了し、ヒナギクの洗顔用の水を桶に注いで部屋に運び終えたら、ハヤテは外に出る。
何をするのか、とは今更で、冒頭のごとし、剣の鍛練をするのだった。
…
相手の戦闘スタイルを先ずは『剣』と想定した所で身体を動かす。
上段、下段、袈裟、突き…。
様々な構えから、様々な剣戟をイメージし、弾き、切り返す。
そこら辺の木材を頂戴して作った簡易木刀で振るうは幼い頃に教わった剣。
結局喧嘩別れして、もう二度と会えなくなってしまった大切だった(・・・)人から叩き込まれた技。
(………そういえば、一度も勝てなかなったな)
■ー■ん、昔は弱かったけれど、今はこんなに強くなったんだ。
木刀を振るい、光る左手をちら、と見てハヤテはもう会えない相手を想う。
あの時、間違っていたのは自分だ。
『――ハヤテ。あなたと私はずっと……』
「――!」
懐かしく哀しい想い出が集中を欠かせ、ハヤテは剣を止めた。
「……駄目だよな。いつまでも引きずってちゃ」
確かに自分はあの時選択を間違えた。
だからこそもう、同じような過ちはしない。
奇跡的に召喚された、護るべき人を見つけたこの世界では。