あやさきけ2

□ツインテール
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ツインテール


「髪、伸びてきたなあ」

 とある日曜日の午後。
 春を感じさせる陽気をハヤテがリビングで満喫していると、ソファに腰掛けていたアイカがそんなことを呟いた。
 アイカへ視線を移すと、髪の毛先をつまみながら気だるそうにしていた。

「髪、邪魔ー」
「じゃあ、切ろうか?」
「それもイヤー」
「どっちなんだ……」

 髪は女の命、とは良く言うが、邪魔だと言っておきながら切るとなると嫌だと言う。
 たとえ幼くても、女心とは難しいものである(この場合幼女心とでも言ったほうが良いのだろうか)。
 
「邪魔だけど、切りたくないんだよぅ」
「パパはワケがわからないよ……」
「どうすれば良いんだろうねー」
「だからアイカはどうしたいんだって」

 なんて意味のない問答なんだ、とハヤテは苦笑する。

「髪を切るんだったら、僕が切るけど」
「いやーでもね……魅力的なんだけどね……」

 アイカはアイカで、なんとも曖昧な答えを返す。

 埒があかない。

「うーん……どうしようかね」
「何かいい案ある? パパ」

 親娘揃って首を傾げ、解決策を考える。

「髪を切らなくても、邪魔にならない方法ねえ……」
「あー本当に邪魔だー」

 アイカが気だるそうに両方の髪を一束ずつ掴んで、ぐあーっと上にあげた。
 その姿を見て、ハヤテが「あ」と言葉を漏らす。

「それだよ、アイカ」
「ふぇ?」
「それ」

 ハヤテが指を指したのは、アイカによって上げられている二束の髪である。

「これ?」
「髪型を変えればいいんだよ」
「おおー!」
 
 ハヤテの言葉の意味を理解し、アイカがポン、と手を叩いた。
 アイカは普段、右側の髪を束ねた髪型をしている。
 サイドテールとでも言うのだろうか。

「ツインテールにしてみたらどうだろうか」
「ツインテール!」

 だからこそ、ハヤテはテールの数を増やすことを提案した。
 これならば髪を切らなくても大丈夫なはずだ。
 正直、ハヤテ自身アイカのツインテールを見たいという気持ちもあったのだが。

「この案、どうかな?」
「ツインテール……。いいかも!」
「そう? それなら良かったよ」
「じゃあパパ、早速お願いね?」
「あ、僕がやるんだね」
「もちろん! パパ好みのツインテール、お願いね!」
「はいはい」

 ぽすっ、とアイカはハヤテの膝に腰をおろし、自身の髪をハヤテに委ねた。
 丁寧な手つきで母親譲りの髪を梳かしていく。

「では失礼します、お姫様」
「うむ、苦しゅうない。表を上げい」
「それじゃ殿様だよ」

 そんな取り留めもない会話を交わしながら、無事ツインテールアイカが完成したのだった。
 その後、ハヤテの手によってヒナギクもツインテールにされ、ここにツインテール親娘が生まれたとかなんとか。


End



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