book3

□イヴでも忙しい人は忙しい
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 12月も下旬となり、今年も残すところあと僅かとなった。
 学生たちは今年の授業日程を終え、これから楽しい、受験生にとっては最後の勝負所、の時期がやってくる。

「ふう……」

 勿論受験生ではなくとも、忙しい学生だっている。
 忙しい学生。
 その代表といっても過言ではない生徒、桂ヒナギクは、ため息を吐きながら椅子に背中を預けた。

「まだまだ終わりそうにないわねえ……」

 そう漏らすヒナギクの眼前には、書類の山、山、山。
 積もる程度の雪ならば美しいと思えるが、生憎この白い書類の山は、いくら積もろうと、美しいなどとは思えない。
 同じ白でも、こうも違うものだ。
 そんな下らないことを思ってしまって、ヒナギクは苦笑する。

「師走といってもこの量は、ねえ……」

 白皇学院の授業は本日をもって、今年の日程を終えた。
 明日から、正確には本日の放課後以降から、数週間程度の冬休みに入っているはずである。

「一気にこんな量渡す位なら、もっと早く渡して欲しいわよね」

 しかしそれも一般生徒なら、の話。
 生徒会長には当て嵌まらない。少なくとも、ここ白皇に関しては。

 今年最後ということで、ヒナギクには教師から大量の書類の整理を頼まれていた。
 教師は教師で、受験生たちのことで手が一杯のようで、これらの書類に割ける程の手間も余裕もないらしい。
 ヒナギクも事情は理解しているつもりだ。だから、露骨に嫌な顔を浮かべることは出来ない。
 精々誰もいない生徒会室で、愚痴を吐く程度である。

「よりにもよってこんな日に、誰もいないなんて……」

 生徒会室は、伽藍としていて誰もいない。 
 いつもの三人はもう諦めているが、千桜はバイト、愛歌は外せない用事があるらしく、今日の作業はヒナギク一人で行わなければならない。

「はあ……」 

 ため息だって出る。
 ましてや今日は、

「折角のクリスマスイヴなのになあ……」

 ヒナギクはそう呟いて、手元のカレンダーに目をやる。
 12月と書かれたカレンダー、そこには。

 「24」の日付のところに、赤い丸が付けられていた。
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