短編 2nd
□テスト明け日和
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桜はすっかり散った五月の下旬。
中間テストを先程終えたその帰り道。
「テスト終わりましたね〜」
最終日というだけあり、午前上がり。
私の隣を歩くハヤテ君はやや頬を窶(やつ)れさせながらそう呟いた。
「そうね〜」
「大変でしたよ…」
「そうね〜」
「聞いてます?」
「聞いてるわよ〜」
空は快晴。
午前上がりに晴天とは、なんて素晴らしいのだろう。
吹く風に乗ってなのか電波に乗ってなのか、ハレ晴れで愉快なメロディが耳に…って何言ってるのよ私。
「――いい天気ねぇ…」
と、視線をハヤテ君に向けると何やら拗ねた顔で私を見ていた。
「どうしたの?」
首を傾げて尋ねると、
「……別に、ヒナギクさんが構ってくれないからいじけてるわけじゃないです」
ハヤテ君はその場にしゃがみ込んで呟いた。
手元を見れば美しいのの字が書かれている。
……っていうか。
「あら〜?ハヤテ君、私に構ってほしかったんだ?」
ハヤテ君に視線を合わせてそういうと、ハヤテ君の顔が真っ赤になった。
「な――!ち、違いますっ!!」
「でも顔が真っ赤よ?
図星なんでしょ〜」
「あ、赤くなんてなってません!」
一生懸命に慌てる様子が何と可愛い事か。
こうやって、いつもはかっこいいのに時たま見せる可愛らしさもハヤテ君の魅力だと思った。