短編 2nd

□幸せの価値
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 幸せというのは意外と近くにあるものだ。
 それが何なのか、どれくらいの価値なのかは人それぞれで異なるけれど、

「……ヒナギクさん」
「なぁに?ハヤテ君」

 私の場合、大好きな人に名前を呼んでもらえる事が一つの幸せだ。

 ハヤテ君と一緒にいるだけで幸せ。
 話せるだけで幸せ。
 手を繋ぐだけで幸せ。
 キスをしてくれた時はもっと幸せ。

「呼んでみただけです」
「えへへ…。そうなんだ」

 ほら、こんなにも私の周りには幸せが溢れている。
 今みたいなやり取りが私をもっと幸せにして、心が暖かくなる。
 その度に私はハヤテ君が大好きなのだと再認するのだ。


 だから、


「ハヤテ君」
「はい、何ですか?ヒナギクさん」


 大好きな人に触れるだけのキスをして。


「……呼んでみただけよ」
「…くす。そうなんですか」
「そうなんですよ」


 大好きな人の優しい笑顔を見て。


「なら仕方ないですね」
「うん、仕方ないわ」


 もっと体を寄せ合って、二人で幸せを感じたい。

 それがどんなに小さな幸せであろうと、私にとってはとても貴重な価値なのだから。

「ハヤテ君……」
「ヒナギクさん……」


 そんなことを思って名前を呼び合えば、ほら――。

 ――幸せがまた一つ、私たちに訪れてくれた…。

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