ヒナの使い魔
□第二章
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キュルケがいなくなると、ヒナギクはわなわなと拳を握り締めた。
「くやしぃぃ!何よ、自分が胸デカイからって…」
「ま…まぁヒナギクさん、気にしないで…」
「気にするわ!何でもかんでも胸のせいに…」
どうやらヒナギクは胸にコンプレックスがあるらしい。
ちら、と見てみればやはりキュルケよりもかなり劣っている。
(…でもそんなに気になるのかな?)
だがハヤテからしてみればそんなに胸の大きさが気になるものなのか、良く分からない。
だから気にしなくていいですよー、と励まそうかと思ったが、拳やら足やらが飛んできそうなので止めた。
「と…!ところで、あの人ヒナギクさんのこと『ゼロ』って呼んでましたよね?なんです、それ?」
拳や足が出てくる前に、と話題を変えてみたハヤテである。
ヒナギクに振った話題は先程キュルケがヒナギクに言った『ゼロのヒナギク』。
響きからしてみればなかなか格好良いとハヤテは思ったのだが、気になったので聞いてみたのだった。
「………あだ名よ」
ハヤテの問に、わなわな震えていた拳がふと止まり、ヒナギクは静かにそう答えた。
「『微熱のキュルケ』みたいな、ただのあだ名。……格好良いでしょう?」
「………」
はは、と笑うヒナギクの顔が、何故だか儚く、切なく、悲しそうで。
「…そうですね」
「ありがと。…それよりハヤテ君、お腹減ったでしょ?食堂に案内するから、来て」
触れたらいけない様な気がして、曖昧な返事一つ、ヒナギクに付いて行く。
深く追求する必要はない。
前を歩くヒナギクを見てハヤテは思った。
彼女なら、いつか話してくれる。
そんな気がしたから。
ハヤテのその勘は直ぐに当たる事になる。