ヒナの使い魔
□第二章
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「『サモン・サーヴァント』で平民喚んじゃうなんて、あなたらしいわ。さすがはゼロのヒナギク」
ヒナギクの白い頬に、さっと朱がさした。
「べ…別にいいじゃない」
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
「悪かったわね!」
挑発的な物言いにヒナギクは反射的に叫んだ。
だがキュルケは気にした風もなく涼しい顔であしらう。
「あら、誰もヒナギクなんて言ってないわよ?でもどうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ。フレイムー」
ぐっと言葉に詰まったヒナギクをさも可笑しそうに見ると、キュルケは勝ち誇った顔で使い魔を呼んだ。
キュルケの部屋から、のっそりと真っ赤な巨大トカゲが現れた。むんとした熱気が、ハヤテを襲う。
「デカ……」
「これってサラマンダー?」
赤トカゲの出現に各々が感想を呟いた。
ハヤテのはともかく、ヒナギクの言葉にキュルケはさらに顔を得意げに歪める。
「そうよー?火トカゲ。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?ブランドものよ。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「あなたの属性にぴったりじゃない。『火』属性だけに」
「ええ。『微熱のキュルケ』ですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
ふふん、と胸を張るキュルケ。ヒナギクも負けじと胸を張り返すが、悲しいかな、ボリュームが違いすぎる。
「っ…!うるさいわね!!」
今までで一番反応が良かった。どうやらヒナギクが一番気にしていることに触れたようだ。
それを知っていたのか、キュルケはにっこりと笑った。余裕の態度だった。
それからハヤテを見つめる。
「あなた、お名前は?」
「え?あ…綾崎ハヤテといいます」
「アヤサキハヤテ?ヘンな名前ね」
「はぁ…そうですか?」
「じゃあ、お先に失礼」
ハヤテに答えず、炎のような赤髪をかきあげ、颯爽とキュルケは去って行った。