ヒナの使い魔
□第二章
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「着替えたら出てきてくださいね」
着替えを行うヒナギクの為、ハヤテはそう言って部屋を出た。
本来ならば使い魔であるハヤテがヒナギクに服を着させるのだが、ヒナギクが恥ずかしいから自分で着替えるといったので今の形に納まったのである。
ハヤテも恥ずかし過ぎて着替えさせる仕事は御免被りたかったので良かったのだが…。
「ヒナギクさんは気付いてないのか…?」
洗濯物の中に含まれるパンツを洗われるのは恥ずかしくないのだろうか。
いや、きっと恥ずかしいに決まってる。気付いてないだけなのだろう。
今日の夜にでもそのことを話そうとハヤテは決意し、前を見た。
目の前には似たような木製のドアが三つ並んでいる。
言わずもがな、ヒナギク以外の学院生の部屋だ。
そのドアの一つが開いて、中から燃えるような赤い髪の少女が現れた。
ヒナギクより若干背が高く、ハヤテとたいして変わらない身長だ。
(綺麗な人だなぁ)
だが…、彼女には色気があった。
彫りが深い顔に、突き出たバストが艶かしい。
一、二番目のブラウスのボタンを外し、胸元を覗かせている。
褐色の肌に、雰囲気…。
全てがヒナギクと対象的だった。
「お待たせ、ハヤテ君」
ハヤテがそんな思考を働かせていると着替えを終えたヒナギクが出て来た。
褐色の少女はヒナギクを見ると、くすりと小さく笑って挨拶をした。
「おはよう。ヒナギク」
「おはよう。キュルケ」
ヒナギクが挨拶を返すと、キュルケと呼ばれた少女はハヤテを指差して、馬鹿にしたような口調で言った。
「あなたの使い魔って、それ?」
「そうよ」
「あっはっは!ホントに人間なのね!凄いじゃない!」
まぁ…確かに。
少女の笑い声が響く中ハヤテは思う。
ハヤテは昨夜、ある程度の常識はヒナギクに教えてもらっていた。
説明の中、自分の世界と比べて、やはりここが異世界であることを確信し、自分はこの世界の使い魔としてもイレギュラーな存在であることも教えられていたので、キュルケの言うことも最もであるのだ。
ただ、大声で人を馬鹿にするのは如何なものかは別として。