ヒナの使い魔
□第五章
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「なーにぶつぶつ言ってるのよ?」
「!」
と、突然聞き慣れた声が耳に入って来た。
驚いて声のほうを向けば、
「はい。汗かいた体で講義出るのは気持ち悪いでしょ?」
水浴びをしてこいということだろう、タオルを差し出す主人がいた。
「ヒナギク……。起きたんだ」
「誰かさんが出ていく音がしたからね」
その口ぶりから、最初から鍛練を除いていたのか。
「で?何がどうしたの?」
ハヤテの反応を十分楽しめたらしいヒナギクは満足そうに尋ねてこられる。
それがなんだか悔しくて。
「…別に。ヒナギクを何がなんでも守ってやるって誓っただけだよ」
「なっ!」
決して間違いではないことを返答にして、ヒナギクの反応を楽しむことにしたハヤテなのであった。
二人の朝は、極めて平和である。
…
汗ばんだ身体を拭い終えたハヤテは、朝食のために移動する。
とはいっても、ヒナギクとともに食堂に行くのではなく、食堂の裏の厨房なのだが。
「おはようございます」
「おぅ!来たか『我らの剣』!」
ハヤテが挨拶とともに厨房に入ると、体格のよい親父が豪快な笑い声と共にハヤテを迎えた。
その親父はマルトーといって、このトリスティン魔法学院の厨房の料理長を任されていた。