ロマンス

□愛し合わなきゃ
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 毎晩毎晩、狂ったようにオレの種を彼女のナカに送り続けた。
 繋がりが欲しかった。
 出張ばかりで忙しくて、彼女にいつも寂しい想いをさせて。
 だから、家族になりたかった。そのために子どもが欲しかった。
 彼女の気持ちが、オレから離れてしまう前に……。

 腕の中で眠る彼女の髪を優しく撫で、額にかかる前髪を避けてそこに唇をつける。
 渇いた音と共に唇を話し、彼女の寝顔を見つめた。

 できないはずがない。毎晩、オレの全てを彼女に注ぎ込んでいるのだから……。きっと可愛い。オレと彼女の子なら。

 でも彼女はいつも涙を流す。オレが種を注ぎ込んでいる最中、お願いやめて、って。泣くんだ。
 どうしてだかは分からない。オレはこんなに彼女が好きで、繋がりがほしくて、恋人じゃなく家族になりたいと思っているのに。なぜ……? 彼女はオレが嫌いなのか?

「ん……」
「目、覚めた?」
 寝起きの彼女は、大きく息を吸って、吐いたあと、力無く笑った。
「起きてたの?」
「ん、寝顔見てた」
「明日も早いんでしょ? 寝なきゃ」
「恋人の顔見てるだけで体力回復するの」
「またまたぁ……」
 肩を揺らして笑う彼女からは、さっきの涙は想像できない。

 オレと家族になるのが嫌なのか? オレとの子どもを作るのが嫌なのか? オレはこんなに彼女が好きで、彼女しか見えていなくって、彼女と居られれば幸せなのに。
 幸せにする自信もある。絶対に悲しい想いはさせない。それなのに、一体何が不安なんだ。

「次の出張、長いんでしょ? しばらく帰れないんでしょ? つらいよ。会いたいときに会えないのは……」
 そしてオレは、初めて彼女の本音を聞いた。
 今のままじゃだめだったんだ。出張ばかりで月の半分も帰れなくて、帰って来ても疲れて会えない日のほうが多い。そんなんじゃ、いくら家族になったところで、寂しがり屋の彼女を幸せにすることなんてできない。
 だからオレは彼女に覆いかぶさって、その唇に吸い付いた。
 今オレにできる精一杯。愛さなくちゃ。愛し合わなくちゃ。このままじゃ、悲しい大人になってしまう。






(了)



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