中編小説

□恋は人を変えるという
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「遼太さん」
「え?」
「って呼んでもいいですか?」
 そう切り出したのは、十回目に会った日のこと。彼はきょとんとしてわたしを見たあと、にっこり笑って頷いた。
「いいよ。好きなように呼んで」
「じゃあわたしのことも名前で呼んでくださいよ」
「小雪ちゃんって?」
「憶えていてくれたんですね」
「そりゃあ常連さんだしね」
 嬉しい。嬉しい。嬉しい。名前を憶えていてくれたことも、お願いしたらあっさり呼んでくれたことも。彼の口から、わたしの名前が出たことも。こんなに嬉しい恋は初めてで、もう告白してしまっても良いんじゃないかという気分になってしまった。
 でもまだ早い。告白の日は決めてある。女の子が自分の気持ちを伝える日、バレンタインデー。二月十四日まであと少し。それまでにもっと可愛くならなければ。






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