中編小説

□すきとおるし
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 たまにふわふわと、これが夢なのか現実なのか区別ができなくなる時がある。やけにぼうっとしてしまって、右に行けばいいのか左に行けばいいのか分からない。目的地と反対の方向に歩いて行ったり、階段を踏み外すことなんてしょっちゅう。絶望的なくらい周りが見えていないみたいだ。ずっと夢の中にいるような、不思議な違和感。
 視力が落ちたのなら眼鏡をかければいいし、夢を見ているのならアラームを止めて目を開ければいい。でも、夢と現実の区別がつかない違和感はどうやって解決すればいいのか。わたしには分からない。
 これはいつからだろうと思い返してみると、ちょうど二年前からだ。二年前から、わたしの時間は止まってしまったかのようだった。






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