短編小説

□見たくないなら、目を瞑ればいい
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 早足で帰宅して、シャワーを浴びようとそのままバスルームに直行する、のとほぼ同時。バッグの中のケータイが鳴った。慌ててバスタオルを巻いて電話を取る。相手はスポーツバーの店長だった。
「絵里ちゃん、悪いんだけどさあ」
 心底申し訳なさそうに、店長はこう切り出した。
「秋人がうちの店で酔い潰れててさあ、迎えに来てくれない?」
 しばしの沈黙。
「どうしてわたしなんですか?」
「いやタクシー呼んで放り込んでもいいんだけど、俺ら秋人の家知らねえし、秋人もちゃんと住所言えるか分かんねえし、そもそも店離れらんねえし」
「まあ、確かに」
「頼めるの絵里ちゃんくらいしかいなくてさあ」
 そう言われてしまえばもうわたしが行くしかない。他の友人たちの顔を思い浮かべてみても、あのスポーツバーまで迎えに行けそうな人は誰もいない。
 とりあえず服を着よう。今日何度目かのため息をついた。





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