小さい本棚
□初めて恋を知る
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あの子を見ていると気になって目で追ってしまう。
最初は群れている姿を見てモヤモヤとした気分になっただけだった。
そのうち他の下等生物たちには太陽のような笑顔で接するのに、僕の前では恐怖に引きつった顔しか見せない。そんなどうでもないようなことでイライラするようになった。
そんなことを考えてるとだんだんとイライラしてきて仕事が手につかなくなってきた。だから、並盛りにはびこるクズたちを咬み殺そうと思い僕は応接室を後にした。
学校を出ると日も傾き暗くなりそうだった。部活動生ももう遅い時間だからか部活を終わらせ帰りの準備をしている。それを横目に見ながら門から出て行く。
商店街を歩いてると路地裏の影で喧嘩をしている声が聞こえる。獲物を逃さないように気配を消して近づく。まぁ、消さなくてもこんな奴らに気づかれるはずはないが。
そいつらの顔が見えるくらいまできた時にかすかにすすき色が見えた。
「ねぇ、そこで何してるの。咬み殺すよ」
群がってた男たちは相手が僕だと知り逃げようとしていたが、それを逃がすはずもなく全員咬み殺した。少しやりすぎたかもしれないが気にしない。そして、すすき色に目を向ける。
「ひっ…!」
やはり、怯えた顔。そんな顔をして欲しいんじゃないのに。
少ししゃがみ、顔についた泥や汚れを払う。一瞬ビクっとした目の前の子供が、今されてることに気づきぽかんと口を開ける。
「…へ?」
「…笑ってよ」
「え?」
「怯えた顔なんてしないでちゃんと笑ってよ」
言ってしまって恥ずかしいことを言ったことに気づいて思わず顔を背ける。
ぽかんとした顔が徐々に緩んでいくのがなんとなくだけどわかった。
「雲雀さん…ありがとうございました」
初めて僕の前で見た笑顔はとても綺麗で、儚げで。
このままずっと見ていたいと思った。