Short story


□春向かう垣根
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・赤司誕の続きです
・一話でも読めます




 本当に、こいつらどうすりゃいいんだよ。隣で真剣に品定めしている赤司を見て、更に大きな溜め息を吐いた。

 今日は1月30日、週末でもないのにいきなり買い物に付き合ってくれと言う赤司に青峰は無理やり連れてこられたのだった。本が好きそうだからと言って本屋に行ったり、黒子に似合いそうだとか言って宝石店に行ったり…現在5軒めのスポーツ店に着いたところだ。てか悩み過ぎだろ!黒子に似合うとかどーとか…これで付き合ってないとかありえねーんだけど。

「これはどうだろうか?」
「あー、いんじゃねーの」
「…青峰ももっとちゃんと考えてくれ、いつも黒子と一緒だろう?」

眉を寄せて明らかに不機嫌モード全開の赤司はいつもなら背筋がゾッとするが、何だか全然怖くない。なんつーか、いつものさつきみてーな感じで。

「まぁ、テツに合ってるんじゃねーの?」
「うん、そうだよな。これにしよう」

 俺に聞かなくても買ってたよな、何て言えないけど取り敢えずさっさと終わってよかったと思うばかりである。決めれ貰わないと永遠に店を周り続けるのはさつきで経験済みだ。さっさと買わせて帰らねーと…?

「あれ、赤司君?…に青峰君」
「く黒子??」
「お、おぉ部活ぶりだな、テツ」

 何でいんだよ!という前に取り敢えず赤司が選んだものを奪い取り後ろ手で隠した。あぶねー、

「おばあちゃんが明日僕の誕生日なのでバッシュ買ってくれると言うのでお言葉に甘えて買いに来たんです」
「そうか、良かったな!テツのバッシュボロボロだったもんな」

…ん?今さりげなく明日誕生日アピールしたよな、赤司に

「ところで、あの、二人はどうして」
「へ、?別にちょっと買い物に、な」
「あぁ、付き合ってるんだ」
「そう、ですか……」

 いや、俺が付き合わされてるんだよ。チラリと見ると話を合わせろと目線で伝えてくる真っ赤な瞳があった。めんどいし話がややこしくならないようにさっさと帰ろ。

「じゃ、俺たち帰るからまたな」
「…あの、赤司君、青峰君」
「?」
「お幸せに」

 それだけ言って駆け出した黒子。赤司と青峰はそれをただじっと見ているだけだった。

「何だったんだろうな?」
「さぁ?」
「あ、プレゼントありがとうな」
「おぉ」

 






「それっスよそれ!!」
「はぁ?何がだよ」
「黒子っちが元気ない理由っスよ!」
「どこで元気がなくなんだよ!?何もなかっただろ」

 もうなに言っても駄目だと黄瀬は肩を下ろした。今朝は珍しく朝練を休んだ黒子を心配してクラスに行った黄瀬だったが、黒子は普通に生活しているように見えた。しかし、いつものように抱き付いても振り切らないし、どこかぼーっとしている、と言うことだ。

「お前、嫌われたいのか?」
「違うっスよ!!青峰っちはどうしてそうなるんスか!?」
「俺も青峰と同意見だか?」
「赤司っち…」

もともとは赤司っちのせいなんスけど…とか何か言っている黄瀬は放って置いて、これは由々しき事態なのだ。このままでいたらきっと体調不良でも言って帰ってしまうかもと緑間が言うのだ。問題は、今すぐ来るのはまだ準備してないし誰かが黒子を足止めしなければならない、と言うことだ。

「赤司ちん、黒ちんのところ行って来なよ」
「いや、俺は…「さっさといくのだよ」……。」

 反論しようにも2mの紫原と190の緑間に押し出され何も言えなかった。

「赤ちん、困ったらこれ渡しちゃいな?」

 ぞんざいに投げられたものを持って黒子の教室へと向かった。紫原に後でお礼をしなければならないな。









 机から顔を上げると、もう直ぐ部活の始まる時間だった。机に突っ伏して寝ていた為、頬の辺りに妙な違和感があり、跡が付いてしまったようだ。今日は授業中ずっと寝たり起きたりしていたので寝過ぎなのか頭がくらくらする。
 そんな時でさえ、昨日の赤司の言葉が頭の中で響いていて、もう駄目かもしれないとまた頭を伏せた。そして、ヒンヤリした机の居心地の良さにまた目を閉じた。



「黒子」

 いきなり目の前から声が聞こえて、うとうとしていたとはいえ飛び起きてしまった。

「あか、しくん」
「跡付いてるよ」

 何故いるのかとか、いろいろと聞きたかったが目の前でクスクス笑う赤司君に顔から火が出るように熱く、赤くなってしまったんだと分かったって何も言えなくなってしまった。だが、昨日失恋したばかりなのにとすぐに表情を曇らせてくれた。

「黒子、黄瀬が言っていたが…」
「赤司君!、僕の話聞いて貰えませんか?」

 赤司の言葉を遮って声をあげてしまった為、赤司は目をパチクリさせていた。もう何でも良いやとヤケクソだった。言うこと言ってさっさと帰ろう。

「あのですね、まずは昨日の青峰君とのデートを潰してしまってすいません。ですが、僕は、」
「は?何を言って居るんだ?俺は青峰とデート何かしてない」
「え?でも昨日…」
「青峰に付き合って…いや、僕の買い物に彼を付き会わせたんだ」

 困惑の表情を浮かべている黒子に紫原から渡された小さなプレゼントを握らせた。それで全てを察した黒子は、ハァと息を吐いてカクンと首を項垂れていた。ただの僕の勘違いじゃないか、悩んだ昨日と今日の時間はなんだったんだ。

「ほら、開けていいよ」
「あ、はい。…リストバンド?」
「そう、いろいろ考えたんだけど、黒子にはやっぱりそれが似合うと思ってな」

 どう?何て聞くものだから答えは嬉しいです、とだけ言っておいた。時計をチラリとみて、怒られに部活へ行こうかという赤司君につられて席を立った。まぁ、実際はもうパーティーの準備が整っている筈なんだけどね。

 特に話すこともなく、ほぼ無言のまま仲間の待つ部室へ向かう。そう言えばさっきまでのかヤケでそのまま彼に言っていたら何て言ってしまったんだろう。
 自分の心の奥底を垣根越しに覗いてしまった。



  黒子、黒子っち、テツ、黒ちん、happy birthday!!



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 大遅刻ですが、黒子君おめでとうございます!!
まさか、赤司誕の続きがかける何て思いもしなかったですw好きになったのは赤司だけど自覚したのは黒子が先…なんだと思います((
キセキ黒の予定だったのですが挫折に挫折しまして…本当に申し訳ないです。後々、こういうゴミ箱スペースも作ろうかな…?と考える次第ですorz



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