Short story


□甘酸っぱい約束
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・同棲赤黒
・年末に相応しくほのぼののんびりと





 葉がやんわり開くまで待ってからそっと湯を注ぐ。そして、また新たなみかんを剥き始めようとする赤司にどうぞと茶を奨める。

 基本的早寝早起きの規則正しい生活を送っている人でも、何時も親から早く寝なさいと怒られる子供でも今日限りは起きている一年の節目の日。大晦日。
 年を跨ぐ瞬間を家族団欒で過ごすことは定番だが、この二人は違う様だ。

 ありがとうテツヤ、とチラリと此方を見た赤司君はつまらなそうにみかんを一房口に入れる。

「暇、ですね…」
「全くだ。」

 テレビに映る最近話題のアイドルや歌手はこの二人には興味の無い代物だ。時計の短針は11時を示していてこれからクライマックス、と言っている。テレビを見ると不意にあの中学時代時代の黄色い人を思い出した。

「黄瀬君とか出てたら結構面白いと思うんですけどね…」
「……そうだな。」

 しまった、今のは地雷かもしれないです…!
 恐る恐る赤司君の方を見ると案の定ジトーと見ている。中、高校時代からの相変わらずの独占欲の強さはご健在のようで、何で涼太の名前が出て来るんだと言わんばかりの表情をしていらっしゃる。

「い、え…何か…黄瀬君なら面白い事の一つや二つぐら…んぐっ」
「…僕、まだ何も言ってないんだけど?」

 みかんをいきなり口に放り込んだと思ったらククッと笑う赤司君。ムッとして今度は逆に僕がジッと見てやったがさも気にしていないらしい。あ、みかん甘かったです。

「そう言えばもうみかん少ないから取って来てくれないか?」
「え、嫌ですよ寒いですし…僕も食べたいので赤司君が取って来て下さい」
「僕も嫌なんだけど…」

 二人の視線が交差される。端から見れば可笑しいと思うかも知れないが二人だけのこの家は今現在この部屋にしか暖房は付いていない。よって玄関の所に置いてあるダンボール箱の中に入っている物を取る為には部屋を出て寒い廊下に行かなければならない。

「じゃあ、平等にジャンケンで勝負です」

 はぁ?と頭にクエスチョンマークを付けた赤司君はたっぷり3秒かけてやっと理解してくれたらしい。そして仕方がないな…と言い片手を前に出した。

 いきますよ、ジャンケンポン―――

「………」
「…負けてしまったな、取って来るよ」
「…はい、お願いします……」

 立ち上がり、部屋を出て行く赤司を黒子はボーッと見ていた。

 そう言えばあの冬の日以来赤司は勝負にこだわらなくなっていた。瞳孔も黄色から中学時代と同じ真紅に変わっていた。始めは黄色だったのが見間違いかと思ったが、やはり何かが違う。黒子の脳内では中3から高1までの赤司君は別人と判断した。
 そして、その後もう帝王の目、未来を見る事は出来ないと聞いた。

「―ツヤ、テツヤ?」

 ビクンと肩が揺れる。いつの間にか顔を覗き込んでいた赤司君は不満そうな表情をしていた。

「また変な事考えて居るのか?」
「変な事って…」
「テツヤの事なら何でも分かるよ」

 赤司は5、6個持ってきたみかんをテーブルの中心に置いた。そしてむぃー、と昔自分がした様に頬を引っ張られる。

「ありがほうござひまふ、いひゃいれす」
「…テツヤ」
「……はい、」

 軽くジンジンする頬を撫でながら黒子は赤司を見る。
 真紅の髪に同じ色の瞳。吸い込まれそうな瞳をジッと見つめその先の言葉を待っていた黒子だったが、赤司は不意に何でもないと言った。
 …言いたい事があるなら言えば良いのに何だがはぐらかされてしまった様だ。
 妙な沈黙に目の前にあったみかんを手に取ってパクリと口に含む。

「――ッ」

 驚く程酸味の強いみかんに先程のお茶を流し込む。ぬるまったいお茶にみかんで何か後味の悪い変な味がする。

「…こっちの食べるか?」

 差し出されたみかんは実に甘かった。


「…今は少しでもテツヤの側に居たいんだよ。」
 
いきなり緩やかな表情で言われて驚いた。

「あと…数分か、年を越しておめでとうって言い合って、初詣でに行って、甘酒飲んで…」

 本当に楽しそうに話す赤司君を見て自然と頬が緩んでしまうのはしょうがないでしょう?最後に、来年ももテツヤと一緒に年を迎えたいと言われて嬉しくならない訳がないでしょう?

「そうですね…じゃあ今赤司君が言った事全部しましょうか。」
「…本当?」
「本当です。冗談何て言いませんよ。冗談嫌いですし」
「じゃあ、来年の後に再来年もって付け足しても?」
「望むところです」

 二人同時に笑い合って抱き締め合う。ずっと一緒、何時までも一緒。約束何てしなくても一緒なのに「約束」に縛り付けたい赤司君は昔から僕に対しては独占欲の塊。


 ゴーン、ゴーンと微かな鐘の音が聞こえる。そう言えば今年は何色が勝ったのでしたっけ。
 あぁ、そんな事より僕達には「約束」がありました。

「赤司君、あけましておめでとうございます」
「おめでとう、テツヤ」

 1年は365日、今年は君の隣で年を迎えて君の隣で年が終わる。平等に皆に来る年越し、来年も再来年も隣合った2人には除夜の鐘が鳴り響く。



_____

 どうも、皆さんあけましておめでとうございます。実際にはまだ年越してないんですけど(おぉ、11時ぴったしです←)読んで頂けたら幸いです。

 クリスマスに小説描こうとか言ってましたが冬コミの威力に負けました((爆

来年の目標は少しでも良い赤黒小説を書くことですね(来年受験生という記憶はミスディレ…!)

 ではでは、皆さん良いお年を!

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