★おはなし★
□君の瞳は満月#1
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その夜の月は満月だった。
ほんのり赤みをおびて…なんだか怖いくらい。
高嶺リホはベランダで一人空を見ていた。
微かに…猫の鳴き声。
はじめは空耳かと思ったが、そうじゃない。
助けを求める声だ。
リホはそっと玄関から出た。鳴き声は玄関のすぐ近く…見回すと、母が「趣味はガーデニング!」と自慢する薔薇のアーチの下に、子猫がいた。
「可哀相に…震えてる」
リホは震えて丸くなる子猫をそっと両手で拾い上げる。
子猫の温もりと震動が伝わり、ギュッと包み込むと家の中に入った。
そのまま隠すようにそーっと部屋に戻る。
明るい部屋で改めて子猫を見ると、綺麗な銀色の毛並みで足に少し血が滲んでいた。
「薔薇の刺で怪我しちゃったかな?」
リホは子猫の手当をしてあげた。
消毒して包帯を巻く。
その間子猫はおとなしくじっとしていた。
「さ、これでいいよ!君は本当に綺麗な子だね〜」
子猫は銀色の毛並みにキラキラと輝くサファイアみたいな青い瞳だった。
猫好きなリホはたまらず「ん〜」とキスしようとした。
「わ〜〜!!チューは勘弁してや!」
「!?」
どこからか関西弁が聞こえた。
ここはリホの部屋で誰も居ないのに。
猫以外は………。
リホは、ふと子猫を見た。
まさか?猫が喋る?
「まさかね!それに…この猫、バカっぽいし」
「誰がバカやねん!!オレは、めっちゃ知的エリートやで!!」
「猫が喋った!!?」
「やば………」
しまったとばかりに子猫は手を口にあてる。
じぃっと見つめるリホ。
「……うぅ。
あんたには世話になったし説明したるわ。
オレは 月の妖精や!」
「猫にしか見えない」
「うん、確かに猫や!
でも、よう見てみ!銀色の毛並みといい…月の魔力を秘めてるやろ?」