泥棒さんの短い夢
□バレンタインデーキス
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「お帰りなさい」
暗かったから寝ていると思ったのに…
イリスは起きて待っていた。
こんな夜遅くに…
ルパンは呆れたような顔をしてから微笑んだ。
「ただいま…待っててくれたのか」
「今日、バレンタインデーだから」
イリスは赤い包みを差し出した。
「もしかして…チョコ?」
イリスは恥ずかしそうに頷いた。
だって…可笑しいよね。
今夜の仕事は不二子さんのためだった。だから次元さんや五エ門さんに手伝ってもらえなかったんだよね。
他の女に夢中な人にチョコなんて…可笑しいよね。
「ありがとな」
ルパンは包みを受け取ると手早く開け一つつまんだ。
「…お!美味しい」
「本当?」
実は手作りチョコ。
「味見する?」
どういう意味か考える間もなくイリスの唇が奪われる。
柔らかな唇に微熱−
そして、甘いカカオの香りと共に温かく柔らかい感触。
息もできないくらい−
深い口づけ。
「…んっ」
さすがに苦しくなってイリスが口をずらす。
「…甘かった?」
ルパンはそっと離れて聞いたた。
「うん」
キスの感想を聞かれたのか?チョコの感想なのか?−−−どっちでもいい。
「…まぁた不二子にいいように利用されたよ」
ルパンは笑いながら言った。
「…でも好きなんでしょ?」
「ああ…でも…今はイリスがいるから」
「私がいるから?」
「不二子に騙されても笑えるかな……イリスがいるから帰ってくる楽しみがあるってね」
「そう?」
「…君が一番だ、イリス」
ルパンはイリスの額にキスした。
「もぅ、ふざけてるでしょ」
イリスは笑った。
******
数時間前
不二子はルパンから獲物を奪い、去り際「そういえば今日バレンタインデーよね」と言った。
「これ、私から」
不二子が小さな包みを胸元から出した。
「悪ぃ、俺…義理でも貰えねぇ」
ルパンは小さく言った。
「かなり本気なのねぇ〜まるで子供の恋愛みたいなこと言っちゃって」
不二子は笑い飛ばしたが…ルパンはそんな恋愛もいいじゃねぇか、と笑った。
END