★おはなし★

□君の瞳は満月#1
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「ニャ〜〜(もう帰りたい〜)」とベランダの窓をガリガリと引っ掻く。


「あ、こら!猫ちゃん」
やめさせようと近寄った先生の手を少し引っ掻いてしまった。


「つっ…」

先生の右手の甲に血がにじむ。


「ニャ(あ、先生……ごめんなさい」

反省してうなだれたリホ。


先生はクスっと笑った。

「心配しないで…
今夜は満月だ」
先生は右手をあげ、月に照らした。

そして、ゆっくり瞳を閉じ…再び開けると、その瞳の色は銀色だった。



リホは驚いて声にならなかった。


「うにゃーご」
先生が猫の鳴きまねをした???


あれ?



先生の怪我が、みるみる回復していく…。

赤い血の筋が、シューッと消えていく。





まるで魔法だ!!





あれ?
あれれ?



なんか最近こういうシチュエーションなかった?


猫の呪文に魔法………



まさか?


「猫ちゃん、今夜のことは秘密だよ」

先生が悪戯っぽく人差し指を口にあてた。


「…猫ちゃんのおうちに帰りたいのかな?」

ちょっと寂しそうにリホを見て、ため息ひとつついてから窓が開けられた。


リホは、そうっと外に出た。

「猫ちゃん、また来てね」

先生はひらひらと手を振っていた。


リホは少し後ろ髪ひかれる思いがしたけど、先生の部屋のベランダをあとにした。





さて

先生に連れて来られたが…帰り道がわからない!


普通の猫なら臭いとかで帰るかもしれないが、リホは一時的になっただけの猫……。
そんなことできるわけない。

時間もあとどれくらいかわかんないし!!



もし道で元に戻って丸裸だったらどうしよう!!


リホは青ざめた。


あぁ…どうしたらいいの。




満月を恨めしそうに見ていると、

ばふん



一瞬目の前に煙りが出たような衝撃を感じた。

「…一体何なの!?」



「お!お帰りぃ…
なぁ、この漫画の続き無いん?」

目の前には見慣れたリホの部屋…に寝っころがって、お菓子食べながら少女漫画読む銀色の猫!!!


「ナル!!」
「わっ!なんや?」

「よかったぁ!帰れたぁ」
リホは思わずナルに抱きついた…
いや、ナルを抱きしめた。

そう、リホは人間に戻っていた。
ちゃんと服を着て。

「なんや?迷ってたんか。魔法がきれたら元通り言うたやろ?」
「場所や服まで元通りってことだったんだ…よかった」
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