book~妖精→進撃~

□第1話
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――

―――

『…ここ、どこ?』

人一人見当たらない辺りは木で
周りが見えない

見えるとすればその木を遥かに
上回る高さで周りを囲うように
している壁だけだった。

『…グレイシア?』

小さな声で数年間ずっと傍に
いた竜の名前を呼びながら辺り
を見渡すが、誰も言葉を返す者
はいなかった

あるのはただ風で木々が揺れる
音だけが静かに森の中に響く…

『…また…一人…』

両親が化け物に殺された

師匠が自分の身と引き替えに、
化け物を封印した

大好きな兄や兄弟子と生き別れ
てしまった

孤独になってしまった時に
手をさしのべてくれた竜が今は
どこにもいない…

"今度こそ孤独に死ぬのか…"

その考えが頭をよぎり自嘲じみ
た笑みを浮かべた

『…せめて最期くらい、綺麗に
死にたいな…』

そう言って両手を構える

『アイスメイク…"薔薇の王冠(ローゼンクローネ)"』

辺り一面に冷気が溢れ、美しい
大量の氷の薔薇が姿を現した。

師匠が自分だけに教えてくれた
師匠だけの魔法…

『せめて…この中で…』

足から徐々に凍り始める…

するとその時…

エ「スッゲェ!
氷の薔薇がある!!」

『…!?』

人の声がした

何年も聞いてなかった人間の声

振り向くと自分と同い年位の
少年が、キラキラとした目で
こちらをみていた

正確には"氷の薔薇を"だが…

暫くしてようやく気づいたのか
こっちに駆け寄ってきた

エ「なぁなぁ!

この薔薇って氷だよな!?

お前が造ったのか!?

氷なんて高価なモンをどっから
とってきたんだ!?」

『……?』

少年の言葉に首を傾げた

"氷が高価"

師匠のウルと、兄のグレイや
兄弟子のリオンと、一緒に修業
をしていた所は雪山だったし、
グレイシアと出会ったところも
そこからあまり離れてなかった
ので氷が高価なものといわれた
ことなど無かった

未だにマシンガントークの如く
質問攻めしてくる少年に、軽く
呆れを覚え始めた頃に、少年は
足元をふと見てギョッと目を丸くした

エ「お、お前足 凍ってるぞ!?;」

『…あぁ』

あぁ、そういえばとすっかり
今まで自殺しようとしていたこ
とすら忘れていた

少年からここの地域の話を聞く
のも悪くないと想い指をパチン
ッとならすと、氷は跡形もなく
消え去った

それを見て更に目の輝きが増し
た少年に呆るしかなかった

エ「スッゲェ!
氷が一瞬で消えた!!

さっきの氷ってお前がやったの
か!?」

『……(コクン)』

別に隠すことでもないだろうと
素直に頷くとまたまたキラキラ
とした視線が…

いい加減、鬱陶しくなってきた
ので仕方ないと口を開いた

『…別に氷の造形魔導士なんだ

これくらい普通にできる…』

エ「まどうし?ぞうけい?」

少年は眉をひそめて首を傾げる

そんな少年の反応を無視して、
少年に質問する

『…ここはどこ辺り?
イスバン地方まで、どのくらい
距離があるかわかる?』

エ「は…?」

とうとう頭を抱えだした少年

とりあえず解ることだけ教えた

エ「ここはのシンガシナ区の森
でイスバン地方なんてないぜ?」

『…え』

頭を鈍器で殴られたような衝撃
をうけた


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