倉庫(更新停滞中)

□不器用な恋愛事情
act 1
1ページ/9ページ

【不器用な恋愛事情】
《act 1》


卒業


ウィンターカップが終わると、三年生は引退となり、それと同時に俺の中ではその言葉が…強く引っ掛かってしまっている。


「あ…」

練習中にも関わらず、ベンチを見ては…あの人がいない現実を突きつけられる。


何時もなら


『サボってんじゃねぇぞ黄瀬っっ!!』


そう怒鳴って、見事な跳び蹴りをかます笠松幸生が…今はいない。



当たり前だ。
彼女は三年生で…もう此処に来る事はなくて…



そう解っていても、心がそれを受け付けない。



「笠松センパイ…」

誰よりも厳しくて
誰よりも優しくて

大好きな存在


「黄瀬、もう上がっていいぞ」
「でも…」
「オーバーワークは禁物って、笠松先輩から厳しく言われてるだろう?」

そう優しい口調で、厳しい事を言うのは、引退した主将森山センパイの跡を引き継いだ中村センパイだ。

因みに…副主将だった小堀センパイの跡を引き継いだのは、早川センパイ。


俺…未だにあの人が何言ってんのか…分からないッス…。


「はあく行けよ黄瀬」
「『早く行けよ黄瀬』だそうだ」

中村センパイの通訳がなかったら、海常バスケ部は…意志疎通が出来なくてIHどころじゃねぇだろう。

結局俺は、部活を早々に切り上げ、部室で着替えると外に出た。



卒業


「おめでとうございます…なんて言えないッスよ俺」


あの人の姿を見られない。
笑顔も
キレた顔も

泣き顔も


俺にはもう見る事が出来ないんだ。


卒業なんかしないでください



そう言えたら良いのに、俺はその言葉を最後まで言えないんだ。
だって、笠松センパイを確実に困らせてしまいから……





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ