小説(WC後)
□一斉の声 5
1ページ/16ページ
【一斉の声 5】
「お願いします!!」
「来てください!!」
高校の後輩から呼び出された笠松と今吉は、此処が喫茶店であるにも関わらず、堂々と…それも見事に平伏する後輩(しかも主将となった)の2人を前に
もう二度とこの店に来れねぇな
等と考えていた。
「今吉さんじゃねぇと、青峰を止めらんねぇよ!!」
そう無駄に大きい声で、敬語さえも忘れて言うのは…桐皇バスケ部の主将若松。
「マネージャーとして、是非とも参加願います!!」
こちらは丁寧な言い方だが、思慮深い彼には珍しく…余裕がない海常バスケ部の主将中村。
そして、そんな2人と向かい合って座る今吉と笠松の目の前に置かれたのは、洛山全額負担の
GW期間の5月2〜4日までの…キセキの世代獲得高校参加の合同合宿の招待状。
「せやけどなぁ、マネージャーなら桃井が居るやん」
「マネージャー…入って来なかったのか?」
後輩がこうして自分達を頼ってくれるのは嬉しいが、過去の人たる自分達が出張って良いのかが解らず、今吉と笠松は…乗り気ではない。
「桃井…頑張ってくれてますけど、今回の合宿じゃ…アイツの本領発揮の為に」
「スカウティングに力入れさせたいんやな?」
「はい…」
桃井はスカウティングの能力を高く評価され、桐皇の6人目として名高い。
しかも、合同合宿ともなると…スカウティングに力を注いで欲しいと思うのは、若松だけではなく監督の原澤も同意見だ。
「海常は…マネージャー希望が黄瀬目当ての為に」
「マネージャーを取らなかったのか」
「はい」
海常も海常で、一軍のマネージャーが不在という異例の事態だ。
今までは…1年がマネージャーをしてくれていたが、今回の合宿は基本スタメンのみという悪条件。
二軍のマネージャーに頼んだが…
『そっちは良いわよ。
結果次第で大学からお呼びが掛かるんだから。
だけど、私はそうはいかないの!!。
大学受験の勉強はどうすんのよっ!!。
中村が私を娶ってくれるっての?』
と、そう本気で言われてしまい、中村は潔く引き下がった。
「まぁ、俺もそうだったけど…マネージャーって合宿だ何だってなると、勉強する時間がないからなぁ」
「そうなんです」
よほど、この事で頭を悩ませているのか…中村の目の下にはクマが見える。
合宿ともなると、マネージャーの仕事は通常業務に加えて、選手がより良い環境で練習する為に…その準備に大忙しとなる。
設備の有無に料理の手配。
特に一番重要視するのは…買い出しだ。
スポーツドリンク
料理の材料
笠松でさえ、はっきり言って中村や早川…黄瀬が手伝ってくれなかったら、真っ先にダウンしていたぐらいに…重労働。
マネージャー不在ともなると、それをメンバーでしなければならず、そうなると…効率が悪い。
「だから…」
お願いします!!!!
若松と中村の声が重なり、ついでに平伏するのも重なり…笠松と今吉は
解った
そう言うしかなかった。
.