小説(WC後)
□一斉の声 2
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【一斉の声 2】
誠凛は新設されて、今年で3年目となる高校だ。
少子化に加え、人口密度の多い東京都では、当然として高校も数多くあって…。
「…ちょっと…これホントに入部希望者なのっ!?」
にも関わらず、誠凛は去年以上の入学者が殺到した。
理由はバスケ部。
WC初出場で初優勝というバスケ部に入るべく、全国津々浦々から…誠凛バスケ部を狙って入学者が殺到。
これに喜んだのは…学校側。
文武両道を掲げてはいるが、どちらかといえばスポーツに力を上げていない誠凛だったが、バスケ部がWC初優勝と知るや否や…その掌を一気に裏返してきた。
そんな誠凛バスケ部のカントクなのが、今年で3年生となる相田リコ。
入部希望者を集める為に、去年と同じ場所に席を設けたリコだったが、入学式が終わると同時に、バスケ部の前には長蛇の列。
嬉しさのあまり、これは夢かと不安になったリコは、隣に座るバスケ部主将の日向順平の頬を引っ張る始末だ。
「いてぇよカントク!!」
「じゃあ夢じゃないわね」
「自分ので試してくれる!?。
頼むから!!」
ビヨ〜ンと、頬を左右思い切り引っ張られた日向は、そう怒鳴りつけたが…リコは聞いてなかった。
「見たところ、それなりの身体能力だし…。
あとはこれからに期待ね」
楽しげに笑うそんなリコに、その隣では日向と伊月…そして水戸部と小金井が、ビクビクとしながらも様子を窺っていて…。
「お前のせいだからなコガ」
「日向だって悪乗りしたじゃんかぁ」
「いやだからって…これはないんじゃないのか?」
小声で怒る日向
怒られてしょげる小金井
呆れる伊月の手には、回収が間に合わなかった勧誘のチラシが…。
《バスケ部マネージャー募集!!。
出来れば女子で、カワイイと倍嬉しい》
そのチラシには、デカデカとそう書かれていて…。
「あ、そうだ。
バスケ知識のないマネージャーは取らないから、そこんとこよろしくね」
にっこりと微笑むリコに、4人の男はコクコクと無言で頷く。
しかし…
「だぁから、これを作ったのはダァレ?」
そう尋ねてきたリコの手にあるのは、今話題になった例のチラシで…。
「小金井だ」
「早っ!!」
それを認識するや否や、日向はそう言って…伊月はその間髪入れない早さに…思わずそう口にした。
「でもぉ、部活勧誘のチラシって、キャプテンの承認が必要なのよねぇ?」
「あ、いや…それは…」
にっこーりと笑うリコだが、それは彼等の死刑判決を意味していて…。
「日向くんと小金井くん
今日の練習3倍ね」
「いや、だが」
「久々に折りたくなっちゃったなぁ。
伊達政宗とか…そういえば誰かさんのロッカーに、毛利元就があったっけ」
「やりますっ!!」
これ以上…戦国武将フィギュアを折られてたまるかと、日向は涙を流しながらそう言って…
小金井はガックリと肩を落とした。
そしてそんな彼らを…誰にも気付いてもらえない黒子は、寂しそうに見ていたのだった。
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