小説(WC後)
□一斉の声 8
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玲央の様子がおかしい
そう感じ取った赤司は、直ぐに黛へと連絡をした。
昨日は誠凛と何処かの学校の練習試合があり、赤司は観に行った為に、練習を休んだ。
葉山と根武谷に聞いたら
『可愛いけど可愛くない女が訪ねてきた』
という答えが返ってきただけで…。
「玲央…具合悪いなら」
「大丈夫よ。
心配掛けてごめんなさいね…征ちゃん」
開闢の帝王と称される洛山の練習は…日々厳しい。
その練習が終えたと同時に、赤司がそう言えば…最後まで聞く事もなく、実渕はそう答えた。
葉山とは違い、実渕は気分屋とは程遠い。
そんな彼が、3Pを幾度となく外すなんて、赤司には具合が悪いとしか思えない。
「明日…千尋がこっちに来るんだ」
「どうかしたの?」
「さぁ。
オレの顔でも見たくなったんじゃないのかな」
「それは…無いと思うわよ…残念ながら」
本当は…黛に京都に来るよう電話で頼んだのだが、まさかそう正直に言える筈もなく、冗談として言った赤司だったが、実渕に苦笑混じりに返されて…内心ショックを受けた。
「ねぇ…征ちゃん」
「どうしたんだ玲央?」
「私…この口調改めた方が良いかしら?」
そう実渕から言われた時、赤司は正直何て答えたら良いのか…解らなくなってしまった。
無冠の五将の一人がオネエである…という現実に、赤司は多少困惑したものの…その頃の赤司は…実渕でさえも駒の1つとしか見てなかった為に、特に気にした事もなく…。
「玲央は…そのままで良いと思うけど」
「そう…かしら」
実渕は、とても思慮深い。
周りを良く見てるし、何よりも黛の事を赤司に教えてくれたのも彼だった。
『征ちゃん、女子バスケに少し変わった人が居たのよ。
お昼休みにでも、屋上に行けば…確実に会えるわ』
ふふっと笑い、いたずらっ子のようにそう教えてくれた実渕が居なければ、今の赤司は此処にはいない。
そんな優しい彼が悩んでいるのなら、少しでも力になりたい。
そう思った赤司だったが、それはかなり難しくて…。
「そういえば、そろそろテストがあるな」
「征ちゃんなら問題ないでしょ?。
学年で毎回一位なんだから」
「そういう玲央もそうじゃないか」
「問題があるとしたら…」
実渕の悩んでる顔なんか見たくもなく、敢えて内容を変えた赤司に、実渕が思い出したのは
『ヤバい…分かんない。
分かるところがないぐらいに…分かんない…』
毎回テスト前日になり、そう泣きついてくる無冠の五将の一人
葉山小太郎だった。
「あの肉馬鹿に小太郎押し付けようかしら」
「永吉も…成績が芳しくないだろ?」
「小太郎よりはマシよ」
だが、そう口では言っても、必ず最後には怒りながらも教える事になるんだろうと、赤司はそう思うと一人笑った。
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