小説(WC後)
□一斉の声 2
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ところ変わって…場所は再び東京某一角にあるマジバ。
其処の二階で陣取っている2つのテーブル席に座る金髪男の携帯が、大きく鳴り響いた。
『今終わったんだが、まだ練習か?』
通話ボタンを押した先で、そう言ってきたのは…金髪男こと黄瀬涼太の恋人“笠松幸生”の声…。
慌てて時間を確認すれば、笠松のバイト終了時刻を…大幅に超えていて…。
「今、黒子っち達とマジバに居て…」
『場所何処になんだ?』
「え?」
『なぁ、マジ腹減ったんだけど』
『笠松ぅ…黄瀬くん何処に居るん?』
『俺も…数人からサインを頼まれている』
笠松の声が切れたかと思ったら、青峰と今吉…黛の声までが聞こえてきて…。
『そういう事だ。
今から合流するから、店教えろ』
「えっと………」
黄瀬は、笠松からのその強い口調に、マジバの場所を口頭で説明。
その直後に電話は切れた。
「笠松さんどうしたの?」
「笠松さん来るのか!?」
桃井は心配げに
高尾は憧れの笠松が来ると知り…興奮気味に
それぞれに口にする。
「青峰っちと今吉さん…それと黛さんも来るみたいっスよ。
なんか、友達に頼まれたとかで、俺のサインが欲しいとか…」
何時もならば
いやぁ、モデルも大変っスよ〜
ぐらいの事を…平然とサラリと笑顔で言っては、全員を苛立たせる黄瀬だが、今日に至っては…肩を落とす始末で…。
「どうしたんです黄瀬くん?」
「きーちゃんお腹痛いの?」
心配してくれる黒子と桃井の隣では、赤司がやけに晴れ晴れとした笑顔を黄瀬へと向けて…
「涼太がモデルで良かったと思ったのは、今日が初めてだよ」
そう言い放った。
それにギャハハと笑うのは高尾。
「笑いすぎなのだよ高尾」
そんな彼女を軽く咎めるのは緑間だ。
「絶対幸生さん…怒ってるっスよ。
迎えに行くって言ったのは俺…なのに…」
そんな赤司や高尾…緑間をよそに、黄瀬はそう呟いてはうなだれてしまい…。
「アラームセットしとけば良かったじゃん」
「その手があったっス」
高尾のアドバイスも、時間が過ぎた今では、何の価値も意味もなく、更に深くうなだれる黄瀬を…高尾は爆笑しながら見ていた。
「そんな事で怒る人じゃないですよ」
「黒子っち…」
確かに、黒子が知る笠松幸生は…常に突っ込みというか、怒ってるイメージがあるが、それもWCで海常と戦ってからは…一掃した。
『ここまで来たら優勝しちまえ』
負かした相手に、笠松はそう言って…笑ってくれた。
悔しくないワケもないのに、笠松は自分達の背中を強く押してくれた。
誠凛が…自分達が精神的に折れそうになるのを…彼女がいる海常は、必死になって応援してくれた。
「WC初戦での桐皇戦。
桃井さんには…辛い記憶になるでしょうが、火神くんがゾーンに入れたのは、海常の皆が応援してくれたからです」
コートの中で、黒子は聞いた。
絶対諦めんじゃねぇ!!
そう言ってくれた笠松の声を…。
黒子のその言葉に、黄瀬は笑った。
「次は勝つっスよ」
そう言って…。
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