小説(WC後)

□一斉の声 0
4ページ/15ページ


《in秀徳》


「卒業しないで下さい!!」

俺達が入学してから、約1年間…秀徳バスケ部を支えてくれた

大坪さん
木村さん
宮地さん

に俺はそう泣きながら頭を下げた。


「アハハ…。
高尾ぉ…お前死にたいんだな。
よぉし、じゃあ屋上から紐無しバンジー」

え?。
それだと自殺になりませんか?。

ってツッコミはこの際抜き!!。


「こら宮地…。
最後の最後まで後輩と遊ぶんじゃない」

大坪さぁん。
宮地さんの場合は

後輩“と”
じゃなくて

後輩“で”
の間違いですって…。


「だってよぉ大坪」
「高尾も…昨日までは俺達の卒業を喜んでくれてたじゃねぇか。
いきなりどうしたんだ?」

唇を尖らせる宮地さんを大坪さんに任せ、俺の頭を撫でてそう言ってくれたのは木村さんだ。


「そういえば緑間はどうした?」
「…………」
「高尾?」

「俺1人じゃ、アイツの舵取りマジ無理ですっ!!」

これまでは、俺のコミュ力と先輩達の懐の広さ(宮地さんは抜かす)だったりと、上手くやってこれた。
だけど、明日から先輩達は居ない。

マネージャーとして、後輩として甘えるだけだった俺に…その現実は辛い上に…緑間攻略?。

マジ無理だわ。


「何言ってんだよ」
「宮地さん…」

「あのワガママ三昧だった緑間を変えたのは…

高尾和葉

お前だろ?」

本当にそうなのか。
宮地さんに言われても、何か違うような気がして…。


「高尾が居たから、緑間は変わった。
少なくとも俺達はそう思っている」

違いますよ大坪さん。
だってそれは…


「このチームに人事を尽くしてない者はいないのだよ」


真ちゃんの口振りを真似て、洛山戦の直前に言われた言葉をそのまま言えば…宮地さんに頭を軽く小突かれた。


「そのチームには、お前も含まれてんだぜ」
「宮地さん…」

「そうそう。
毎日毎日遅くまで、俺達に付き合ってくれたしな」
「木村さん…」

「お前達が秀徳に来てくれて良かった。
ありがとう高尾…
そして緑間…」

「此方こそ…1年という短い間でしたが…お世話になりました」

真ちゃんなら、体育館で練習してる

のに


その声は俺の真後ろから聞こえた。

「高尾…
お前も何か言うのだよ」

泣いたんだって解るぐらい…真ちゃんの目はウサギみたいに赤くなってて…。


「やっぱり卒業しないでぇぇ!!!!」


そう泣き喚く俺に、バスケ部とは関係ない卒業生が集まり…


「やっぱりバスケ部は仲良いねぇ」


なんて言い出した。


「あ、そうだ。
写真撮ってあげる。
大坪が真ん中で…左右に木村と宮地ね。
ほら、高尾ちゃんと緑間くんも!!」


早く早くと…俺と真ちゃんは大坪さんの後ろに立って…


写真を撮ってもらった。


「現像したら学校に持って来るねぇ」
「宮地の顔に落書きしたら楽しいよ〜」

「佐藤!!。
テメェマジで轢くぞ!!」
「木村の軽トラなら、私は大型トラックだぞ!!。
負けてたまるかぁっ!!」

佐藤先輩(でいいのか?)と、追いかけっこを始める宮地さん

木村さんと大坪さんは…そんな宮地さんを優しく見守ってて…。


「真ちゃん」
「あぁ」

多くを語らなくても、真ちゃんは解ってくれる。

俺達は同時に息を吸い込むと



『1年間ありがとうございました!!』


そう言って頭を深々と下げた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ