小説(WC後)
□一斉の声 0
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「やっぱ来た」
桜の花びらに魅入ってる間ぁに、そう明るく言うんは青峰大輝…その人で…。
「何しとるんや青峰?」
「見て解んねえのかよ。
俺からの卒業祝い」
ウチの問いに、そう答えて…パンパンに膨れたブレザーのポケットから、桜の花びらを降らせる青峰は…なんちゅうか…ガキやった。
せやけど…嬉しいと感じるウチが居って…。
「そないな真似しとる間あるんやったら、早よロッカーに」
「好きだぜ今吉さん」
ウチの言葉を遮って言う青峰からの…思ってもない告白。
「好きて…先輩としてやろ?」
「そなんじゃねぇよ。
なんつーか…離したくねぇっての?」
青峰は子供みたいな無邪気なやっちゃ。
せやから、この告白はウチが考えとるんモンとちゃう。
そう頭で考えても、心が嬉しいと悲鳴を上げる。
「俺…桐皇に入学したのは…アンタが居たからなんだぜ」
「ウチ?」
「初めてだったからな。
俺を“繊細”って言ったのは…。
告白しようと思ったら、月に一回練習に出れば、体好きにしていいって言われた時は、流石にビビったけどよ」
絶対忘れとるて思っとった。
ウチとの出会いなんて、青峰にとったら…取るに足らんようなモンやて…。
せやけど、そうじゃなかったんや。
「青峰ぇ」
「何だよ?」
給水タンクから、梯子を使わず飛び降りて、ウチの前に立つ青峰の尖ったみたいな唇に、ウチは初めて自分から唇を重ねとった。
「いいい今吉サン!?」
顔黒やから解りづらいけど、顔赤くしとる青峰を見とったら…もっかいキスしとーなってしもて、また自分から唇を合わせた。
「ウチも好きやでぇ。
今のキスが…ウチの答えや」
きっと、今のウチの顔も…青峰とそう変わらんぐらいに顔赤いやろなぁ。
なんや、うちらごっつ遠回りしてしもたんやな。
「そっか。
ヤベ…マジ嬉しい」
そう言って、ウチを強う抱きしめてくれる青峰。
「何言うとるんや。
そんなんウチのセリフやで」
そしてウチも、青峰の背中に腕を回したんや。
「なぁ」
「ん〜?」
「あれ救急車じゃねぇ?」
その言葉に、ウチは青峰から体離すと下を見た。
間違いなく、救急車やな。
「あかん」
「どうした?」
「運ばれるんは…諏佐や」
諏佐だけやない。
若松や桜井も運ばれるんに決まっとる。
「さつきの料理か?」
「みたいやなぁ」
アハハて笑うウチやけど、そりゃ笑うしかないやろ。
暫くは此処に居るしかないな。
「せや青峰ぇ
これやるわ」
「鍵?」
「一回しか言わへんでぇ。
ウチのアパートは
東京都………」
「メモ……って早いだろうがっ!!」
焦る青峰に、ウチはアホ峰やなぁと笑い転げた。
《桐皇END
→秀徳》