ロング小説
□雲の切れ間から光射す
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「ハァ…ハァ…」
ジュビアは暗い山道をひたすら走って下る。走ると言っても、足に怪我を負っており、実際は早歩き程度である。
どうしてこんなことになってしまったのか。ジュビアはこの仕事を選んだことを後悔した。
太ももから血が止めどなく流れていく。太ももだけでなく、体のあちこちから血が流れているのが分かった。このままでは危ない、と身の危険を感じた。
「いたぞ!あそこだ!」
後ろからの声にジュビアは振り返る。
(もう追いつかれてしまった…)
ジュビアは再び走り出す。しかし、たどり着いたのは下が濁流の崖だった。
人の気配は真後ろに感じた瞬間腕を捕まれた。渾身の力でそれを振りほどき、僅かな魔法で抵抗する。
なんとかして逃げなければ、そう思った時、相手の剣がジュビアの肩に深々と刺さった。そして、引き抜かれた勢いで体が傾き濁流へと、吸い込まれるように落ちていった。
相手も誤算だったようでジュビアを捕まえようとしたが、僅かに届かなかった。
濁流に落ち、もう水になる力も残っていない。薄れる意識の中愛しい人の顔を思い出し、涙を流した。