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□Never forget
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「はい。じゃあ次はこの絵を見てごらん。君には何に見えるかね?」
髭を蓄えたフリッピーの主治医は、そう言いながら何枚かの紙を差し出す。
その紙にはもやもやとした雲のような絵が印刷されている。
「ええと…僕には、…アイスクリームに、見えます。」
「よろしい。ではこれは」
二枚目の絵を見た瞬間フリッピーは心臓を掴まれたように息ができなくなった。
そして襲ってくる衝動。
だめだ。ここはもう違う。戦場じゃない。戦わなくていいんだ。
ここは安全だ。銃もナイフもいらない。戦う必要ないんだ…。
「はあっ、はあ、はあ、はぁ…」
冷たい感触に意識を引き戻される。
氷水がフリッピーを正気にしたのだ。
「だいぶ、コントロールができるようになってきたみたいですね。ですがまだしばらくは薬も必要でしょう」
医師はいつもの通り、物々しい振る舞いで椅子に座り直し、さらさらとカルテを記入する。
「いつもと同じ薬ですか?」
「ええ、そうです。他に何か心配なことは?」
「…今のところありません。順調に回復していると思います」
「そのようだね。でも、油断はできないよ。これからはなんでも相談しなさい。はい、これが薬」
「ありがとうございます。…ねえ、あなたランピーさんでしょ?」
「からかうのはやめなさい。ドクターランピーだ」
フリッピーはくすくすと笑って病院を後にした。
ランピーの優しいところが彼は好きだった。