短編
□The end begins
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『The end begins』
──…定番の卒業ソングと。
同級生たちの涙を流す姿。
嗚呼、卒業するんだな。
なんて今更。
式はもうすぐ終わりだっていうのに。
3年間、笑って泣いて。
喧嘩して仲直りして。
……恋をして。
とうとうこの日まで云えなかった想いがある。
臆病だからって言い訳して、逃げてばっかりだったんだ。
市丸ギンくん。
独特の訛り、優しい性格、完璧なルックス。そして、女子から大人気。
1年生の時に一目惚れした。
入学式の日、校舎で迷って泣きそうになってるあたしに、彼が声を掛けてくれた。
『どないしたん?』
心配そうな表情と優しい声音に妙に安心したのを覚えてる。
……それが始まりだったんだよね。
日に日に“好き”が大きくなるもんだから、恋を前進させようと頑張った。
そのおかげで、会話を交わす回数が多くなって、市丸くんの笑顔を間近で見る機会が増えた。
毎日が本当に楽しかった。
あぁもぅ。何で今なの。
今日がくるまで何も感じていなかったなのに。
思い出が溢れてくる。
涙がいっぱい零れる。
「卒業…したくないよ……ッ!」
式が終わって、クラスメイトたちが駆け寄ってきた。
「奏ちゃん!今からみんなで遊び行くけど、行こう?」
「あ…ごめん、先に行っててくれる?用事、あるから…」
「わかった、電話してねー」
あたしが1人を一途に想うなんて、
ちょっとびっくり。
そんで、今も好きなんだもん。
……びっくりだ。
どうせ、今日で終わるんだ。
ケジメくらいつけさせてよ。
ほら、足動かせよ、あたし。