短編
□The anymore else
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乱菊と話しとって気づくことができひんかったけど、奏ちゃんの霊圧は思いのほか揺れとった。
瞬歩でそこへと向かう。
「奏ちゃん」
えらい暗い所に奏ちゃんは居った。
「い、ちまる…隊長…」
か細い声と共に振り向いた奏ちゃんの顔は、涙で濡れていて。
大きな瞳は、赤く腫れとる。
「……っ、こないなるまで泣かせてしもたんやね、ボクは…」
今も流れる涙を。
ボクの為に流れる涙を。
そっとぬぐって、小さい体を優しく抱き寄せる。
「別れ…話、ですか…?」
「そないな話、奏ちゃんに話す日なんて一生こないで?
……それとも、奏ちゃんはしてほしいん?」
意地悪やないんや。
この先、ボクが君をずっと好きでいても、君の気持ちが離れるときが来てまうんやないか。
そう思てしまう。
不安になる。
奏ちゃんは、頭を左右にブンブンふって、切なそうな表情を浮かべる。
「なら、えぇ。
……ボクな、奏ちゃんを傷つけたかった、訳やないんよ?いつも、イヅルとかほかの男と楽しそうにしてるんに勝手に嫉妬して。奏ちゃんにも嫉妬してほしゅうて。
………好きなんはボクだけって思っとった」
きっとボクらは同し。
「隊長……っ!」
「ギンて呼んで」
お互いを全然分かっとらんかった。
「ギ、ン」
「ごめんな、奏。
ボクが好きなんは、君だけや。
この先もずっと」
「あたしも…、ずっとあなただけが好きです…」
そう言って見せた奏の笑顔は、ボクの不安を簡単に消し去っていくんや。
ほんま、狡いなァ
優しく抱き寄せてそっと呟いた。
「愛してんで、奏」
fin.