短編
□The end begins
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「市丸くんっ!!」
市丸くんは1人で中庭にいた。
何でだろう。
市丸くん見つけるのあたし得意だ。
きっと、大好きだからね。
「奏ちゃん…?」
あたしにびっくりした表情を見せた。けど、すぐ笑顔になって。
「そない息切らして、どないしたん?」
綺麗な唇で、心に染みるような優しい声を紡ぐ。
「あのね、あたし。…市丸くんのことが好き。入学式で初めて会ってからずっと……ッ!」
涙がでる。3年間の想いごと全部。
さっきも流したばっかりなのに、雨みたいにたくさん。
「一目惚れだったの。それからも話したりして、もっと大好きになったよ。本当はね、云わないつもりだったけど……どんな形に終わってもいいから、伝えたかったの…ッ」
一方的に話すし、泣くし。
そんなあたしの言葉を全部優しく受け止めてくれる。
やっぱり市丸くんは優しいや。
「…………わ。」
「え?」
「奏ちゃん、云うの遅いわ。それに。云わないつもりやったって、ありえへんよ。」
期待してしまいそうな言葉をスラスラ述べるその表情はちょっと怒っている。……次の言葉を急かしたくなる。
「あの…」
「ボクかて、奏ちゃんが好きや。
……奏ちゃんと同し。
入学式の日のあの時。ボクも一目惚れしたんよ」
あたし、都合のいい夢でも見てるのかな。
「ボクら、卒業なんやで。此処ともお別れなんや。……ボクも奏ちゃんも同し。臆病だったんやね」
そう言って少し寂しそうに笑う市丸くんに。
あたしを抱き寄せて静かに涙を流してる市丸くんに。
そこから感じる体温に。
夢なんかじゃないよ、って言われたみたいだった。
また、涙が溢れて。
2人抱き合って泣いた。