短編

□受験応援*
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「奏、何しとるん?」


「勉強。」


そんなん分かっとるよ?
問題はそこやないんや。

いつもボクが話しかければ笑顔で振り向くはずの奏が、今日は笑顔見せることをなければ、振り向くこともせぇへん。


今日はせっかく仕事が早よう終わったっちゅうんに。



「なァ、奏?」


「今集中ッ!」


……放置プレイやなんて、寂しゅうてたまらへん。
ボク、そんなん喜ばんで?



「喉、渇いたんやけど」


「冷蔵庫にお茶あるよ」



やっぱり振り向いてくれへん。


……何のために来たんやろ。




聞いたくせに一向に冷蔵庫に向かおうとせぇへんボクを不思議に思たんか、奏が振り返った。



「ギン?冷蔵庫の場所分かんない…とか?」



「分かっとる」



何度ここに来とる思てんの?




「じゃあ…、あたしが入れてあげよっか!」



「……勉強、せんといかんのやろ」



本当は、もぉえぇやろ?ボクんとこ来て?て云いたいはずなんに。


───…ボクの意地っ張りや。





「…ギン、ごめん。怒ってるよね」



「………」



「でもね、もうすぐ受験なの、絶対合格したいの。……ギンに恥ずかしくない彼女になりたいから」




はっきり云いきった奏。

“恥ずかしくない”そんなん今もなんに。


…せやけど。
そこまでボクは想われてるんやなァて、妙に感激してもうた。



「奏…。おおきに。」



優しゅう抱き締めると、えらい綺麗な笑顔で微笑みよった。



「今日は、もう勉強おしまい」


「…えぇんやで?」


「ううん。ギンがくる前も結構してたから、…………ギンとの時間も欲しかったし………」


最後ん方はえらい声が小さくて。

そんなことでもボクの心を満たしてまう。





「せやったら、奏」


「ん?」





「勉強、しよか?……保健の。」



その言葉で真っ赤になる奏が愛しゅうて、





つい、強う抱きしめてしもた。






           *fin*


→あとがきand市丸様より
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