短編

□A cold
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『A cold』




十番隊三席。名無しさん奏。



風邪をひきました。




「ぶぇーーっくしょんっっっ!」



「…色気のねェくしゃみだな」


「仕方ないじゃないですか…グジュッ…。心配ぐらいしてくださいよー。
それに、色気のあるくしゃみってどんなのですか!」

知るかってボソッとつぶやいて、


「心配してるからこうやってここにいるんだろ?」


尤もなご意見を述べる。


確かに、隊長が仕事しないで私なんか
の看病なんて何のご褒美?って感じですよ。


……恋人の特権ってやつなのかな。



「…なに見てんだ。早く寝ろ」


つい無意識に隊長を見つめてしまっていたらしい。

ほんのり赤い顔が目に入る。


「隊長。照れてます…?かっわい〜!」


「照れてねェ!変なこと言ってっとあっち行くぞ!」


そう言ってペチッと私のおでこを叩く。


「いてて…、あ、だめですよ?!どこも行かないでくださいね?!」


必死な私に優しい笑みを浮かべる隊長。


「…どこも行かねェから。ほら、寝ろ。寝ねーと治らねェぞ」


「………」



その言葉に私の反応がないからか、私の顔を覗き込んできた。




「………寝たく、ないです。
せっかく隊長と二人きりなのに…、寝たらもったいないじゃないですか…」



普段こんなこと言わない私だからだろう。隊長はとても驚いている様子。

私もびっくりだ。自分がこんなこと言うなんて、言えるなんて思ってもいなかったから。

それに、この沈黙のせいで、恥ずかしくなってきた。
いたたまれなくなって俯けば。





「奏」



名前を、呼ばれた。
いつも、“名無しさん”って呼ぶくせに…。ホントに狡い。





「顔、あげろ」



言われた通り顔を上げると、優しく頬をなでられて。
少しずつ近づいてくる隊長の顔。


…反射的にキスされるって思って目を閉じた………瞬間。




バターーーーーーンッッッ




ドアが開いた。
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