「旦那ァ…珍しいですね、今日はお一人ですかィ?」 平常心を何とか装って後ろからそう声を掛けると、足を止めて旦那がゆっくりと振り返った。それだけで胸が異様に騒ぎ始める。 「よぅ、お前も珍しいじゃねーか、相方はどーした」 「土方さんですかィ?別に、あの人と四六時中一緒にいる訳じゃありやせんぜ…」 「そうなの?お前らワンセットみたいなモンだろ?」 ニッと笑いながら覗き込むように近付く顔に、俺は堪らず俯いた。 「それを言うなら旦那の方こそ。いつもあの2人がベッタリじゃないですかィ」 そう、いつだってこの人の隣にいる二人組。当たり前のように傍で寄り添うアイツ等に、馬鹿な話、俺は嫉妬さえ感じてる。 「ああ…今日は朝からお妙が店の連中と一緒にあの二人もピクニックに連れ出してくれてな。いや、ガキは無邪気で良いよねぇ」 「旦那は一緒に行かなかったんですかィ?」 「イイ大人がガキと仲良くピクニックなんて行ける訳ないでしょ。大人な俺はホラ、やっぱアレよ」 そう言って旦那の手がハンドルを握る仕草をしたので俺は少し笑っちまった。 「ああ…パチンコですかィ」 「そ。それに神楽はそのまま今日は新八の家にお泊りだ。久し振りに煩ェのがいねーから俺もゆっくり羽を伸ばせるってもんよ」 その言葉に、現金にも俺はバッと俯いていた顔を上げる。 これはチャンスなんじゃねぇか? そう自分をけしかけた。 この人に近付くチャンスなんて滅多にあるもんじゃねぇ。 そう思うだけで鼓動がやけに鼓膜に響く。 急激に渇く咽を潤すように唾液を飲み込んで、俺は必死に自分を落ち着かせた。 「そーですかィ。そいつは都合がいいや。実は折り入って旦那に相談したい事があったんでさァ」 そう話を切り出した。 2007/05/22
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