「ちぇッ、近藤さんも土方さんも妙に山崎の事庇うじゃないですかィ…まぁ近藤さんは判るけどアンタまでさ…」 「……総悟」 俯く沖田の表情は土方からは見えなかった。 けれどその細い身体が頼りなく揺らいでいるように見えて、土方はそっと腕を伸ばした。 「あ!連ドラの時間だ!」 「ぐおッ!」 突然顔を上げた沖田の頭が土方の顎に見事に頭突きを決める。 「土方さん早く行かないと始まっちまいますぜィ!」 痛みを感じていないのか沖田は軽く頭を撫でるだけでそう言ってパタパタと部屋から走り去って行った。 「あん…の野郎…ι」 後に残された土方はその場にうずくまり、痛みに耐えると同時に無性に沸き上がる怒りをも堪えた。 「ちったぁしおらしいかと思えばああだ…」 暫くして漸く痛みも治まり、土方は立ち上がるとグッと背筋を伸ばして襟元を合わせる。 そうしてから、先程一瞬だけ見せた沖田の寂しい気な様子を思い返した。 もしかするとあの台詞。 本当に山崎に嫉妬しているのかも知れない。 普段おちゃらけで全て誤魔化してはいるが、ごく稀に見せる表情や言動に少なからず本心が混じっているのを知っている。 まるで冗談の延長線上に始まった関係。 軽い相手に、それでもずるずると自分独り引きずられるのが嫌で足踏みしていた。 勿論、 好きだと口に出した事は一度もなかった。 だからって山崎に嫉妬? 「いやナイな。ナイナイ。それはナイ」 土方は数秒考えて頭を振った。 そんな可愛気のある奴じゃない。 「危うく騙されるとこだったぜ…」 まるで自分に言い聞かせるように言葉を口に出す。 そしてフッと息をついてから煙草をくわえ、土方はテレビの置いてある部屋に向かってゆっくりと歩き出した。 2007/05/04
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