「土方さん!休み取って海行きましょうや!海!!」 夏も本番を迎える頃になると、沖田は決まってそう言い出した。 「ああ?何言ってんのお前。人様が羽目外して遊んでる時期が俺達の一番忙しい時だろーが。んな時に休み取ろーなんざ甘ぇんだよ」 土方は手にした書類に視線を落としたまま、また今年も始まったかと内心で溜息を付いた。 「そう言って毎年連れてってくんないじゃねぇですかィ」 「だから毎年忙しいからだろ」 何を判りきった事を。と呆れたように呟く。 「俺達は日頃から世の為人の為に奉仕してんだ。一日くらい休み取っても罰当たりませんぜ」 「てめーの場合日々世の中に迷惑掛けてるの間違いだ。こうゆう時こそ詫びを含めて奉仕しとけ」 土方がそう言うとムッとした表情で沖田は畳の上に寝転がった。 そのまま暫く、沖田が大人しくしている間にと土方は次々と書類に目を通し判を押していく。そうして全ての書類を確認し終えた頃、まるでタイミングを見計らったように山崎が現れた。 「副長。勘定方に提出する書類の方、出来てますか?」 「ああ。丁度今終わったトコだ」 「良かった。先月の分早く出せって責っ付かれちゃって…て、沖田隊長…何やってんですか?」 そう言った山崎につられるように土方が視線を辿れば、自分が座っている座卓の下に潜っていたらしい沖田と目が合った。 随分静かだと思っていたら一体何がしたいのか。 「何やってんだよテメーは。」 疲れたように土方が溜息を漏らせば、全く状況の掴めない山崎はそれでも関わり合いにならない方が賢明だと判断したのか、あははと軽く空笑いした。 2007/08/06
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