その夜から、気まずい空気がまるで薄い壁のように二人の間に距離を作っているように土方には思えた。 しかしそう思っているのはどうやら自分だけのようで、沖田の態度は傍目には普段となんら変わらないようにも見える。 何つまんねー事気にしてんだよ俺は… そう思いながらも逆に意識せずにいられない自分に土方は戸惑いを隠せなかった。 そんな日が数日続き、その日の昼過ぎになって土方は頓所の中に沖田の姿が見えない事に気付いた。 「オイ山崎!」 「あ、副長。マヨネーズですか?今から買って来ます!」 不意に通り掛かった山崎に声を掛けるとそう即答され、土方は思わず苦笑した。 すっかりパシリの習性が身についたのか自分の仕事でもないのに山崎は自ら雑用を買って出る。 それが便利でつい用を言い付けてしまうのだが、その負い目も多少あってか確かに他の者から山崎を庇う節がない訳ではない。 それが沖田の目にどう映っていたか等、今まで土方自身考えてみた事もなかった。 「あの…副長……?」 山崎の不審そうな声に、土方はふと我に返ったように小さく頭を振った。 「あ、いや。マヨネーズの事じゃなくてだな……総悟の奴、どこ行ったか知らないか?」 「ああ、えっと…確か見廻りに行くって言ってましたけど」 「あいつが見廻りィ?」 どうせ隊務をサボって何処かで遊んでいるか昼寝でもしているのだろう… そう考えて土方は小さく溜め息を付く。 「じゃあ副長、俺は買い出しに行ってきます」 「あ、山崎!」 「はい?」 「マヨネーズは俺が買ってくるからいい」 「え゛!マジですか!?」 「ああ…見廻りの…ついでにな」 有り得ない物を見るような山崎の視線を軽い咳ばらいで躱して土方はそのまま頓所の門を潜った。 2007/05/09
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