YROTS←

□RADICAL BABY 8P/end
1ページ/9ページ

 
何がなんだかわからなかった


僕がこの世で唯一敬い、信頼し、そして愛とも呼べる感情を抱くただひとりの人間が


この世界にとっても唯一無二の存在である、その人が



今、まさに。



驚き、畏縮する僕の、横っ面を容赦なくはり飛ばした…



それはとても 容赦なく






_RADICAL BABY_





「目がチカチカする」



覗き込んでいたカレイドスコープから顔をあげ、僕は苛立ちを隠しもせずに不満をもらした。


「そうですか? 綺麗じゃないですか」


メロは相変わらずです、と呟きながら、僕の手の中からそれを神経質そうに指先でつまみあげる。


相変わらず、なんだよ。


呑気に片目をつぶってレンズを覗き込む彼を、思わずキッと睨んでしまう。


「だってそんなもの…所詮オモチャじゃないか」


僕はもうおもちゃで遊ぶ年じゃない。

…ニアじゃあるまいし。


ものすごく久しぶりに逢えたっていうのに…。



「玩具はきらいですか?」


ぎょろりと大きな黒い瞳が不思議そうに僕を捉える。


僕は負けじと睨み返す。


「…いつまでも子供扱いするなよ、L」


「してませんけど…メロには向きませんね。じゃあこれはニアにプレゼントしてみます」

「!!!」


言いながらさっさと部屋を出ていこうとする彼に、僕は渾身の力をこめて体当たりした。



「い、痛いですよ…」


「L! それ、僕にだろ? 僕がもらうよ!」


せっかくLが持ってきたんだ、正直興味ないけどLからの贈り物だとしたら何だって宝物になる…!


ニアなんかにとられてたまるか。


猫背をさらに丸めて腰の痛みに呻くLに、僕は満面の笑みをつくってみせた。


「ありがとうL。大事にするよ」


「…子供の考えてることはよくわかりません」


「やっぱりしてたじゃん、子供扱い…」


「いえ、独り言ですから気にせずに」



わかってるけど…。


世界のLにとっては僕なんかまだまだヒヨッコだって。



わかってるけど…わかってくれよ。



僕はあなたに追いつきたくて。



あなたの事ばかり、考えてる。




「確かにカレイドスコープは玩具ですが…」


僕の心情を知ってか知らずか、Lはノブに手をかけながらふと振り返った。


深い隈に縁取られた底抜けに黒い瞳に、僕はいつものように磔られて、動けなくなる。



「廻せばくるくる変わる幾何学模様は、人間の心理とたいして変わらないような気がします」


そう言うと、微かに笑ったように見えた。



彼が静かに閉じたドアを見つめて、僕はしばらく立ち尽くしていた。


彼からもらったまま(ひったくった?)握りしめていた玩具の万華鏡に目線を落とす。


「………」


覗いて廻してみたけれど、相変わらずつぶらない方の片目がチカチカうるさいだけだった。




…心理とは如何に。





僕はまだまだ子供で。




大人のあなたが言うことに、ちゃんと応えてあげられない。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ