Short Story

□言葉の重み
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違和感を抱えながらコーヒーを味わっていると、いつの間にかコーヒーカップの底が見えていた。


「…もう一杯、おかわり貰える?」
「はい。喜んで」


彼はコーヒーカップを受け取ると、丁寧にコーヒーを淹れ始める。
彼がおかわりを持って来てくれた丁度その時、ダイニングの扉が開く音がした。朝早いのに全く眠気を感じさせない雰囲気のロビンが立っていた。


「あら、ナミ早いのね」
「ロビンこそ」
「ロビンちゃん、おはよう!」
「おはよう、サンジ君。私にもコーヒー頂ける?」
「勿論だよ、ロビンちゃん!今すぐ淹れるからね!」


大袈裟に、バカみたいに答える彼。
さっきよりも確実に増す違和感。


「…ナミ、顔が怖いわよ」
「えっ!?……何でもないわ」


そんなに表情に出ていたんだろうか。
何かと気が付く彼に見られたら、必要以上に心配されかねない。そう思って笑顔を作ろうとするけど、芽生えた違和感が邪魔をする。


「ロビンちゃん!お待たせしました!」


いつもよりも高い声。
女の前でする緩んだ表情。


「美味しいわ」
「幸せー!!」


ダイニングに響く彼の声に、少し頭が痛くなる。思わず右手で頭を押さえる。


「…あれ?ナミさん、どうかした?」


彼が近寄って来る。
きっと、また必要以上に心配している。
笑わなきゃと思うのに、顔の筋肉は引き攣ったみたいに動かない。


「……ちょっと、眠いだけ!部屋に戻るわ!」
「えっ?ナ、ナミさん!?」


逃げるようにダイニングを飛び出す。
眠いだなんて嘘、きっと彼とロビンにはお見通しだ。朝ご飯の後、きっと心配されるだろう。
心配そうに響く低音がいつまでも頭に残って離れなかった。

 
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