Short Story

□気遣い屋な彼といじっぱりな彼女
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どうして彼がこんな所で眠ってしまったのか。
それは、いつ誰が“コック”を必要としても対応する事が出来るように、だろう。
自分よりも他人を優先しがちな彼らしさが表れている。


「本当にバカみたいに無茶するんだから……」
「彼は優しくていい人でしょう?」
「それは…そうだけど……」
「……だから、かしらね」
「え?」


こんな事言ったら、彼女は怒るかしら。焦るかしら。


「彼の傍は、居心地が良いの」


湧き上がる感情のままに言うと、彼女は大きく目を見開いた。
私の言葉の意味を図りかねて揺らぐ瞳。その奥に宿った一つの炎が、私にとってはとても羨ましい。


「ロ、ロビン!!そ、それ、どういう意味!?」
「そのままの意味よ」
「あ、あんた、まさか、サンジ君の事……っ!?」


少し、意外だった。
彼女が最も強く表した感情は、怒りでもなく、焦りでもなかった。


「だ、だめ!!サンジ君は…サンジ君はだめっ!!」


まるで繊細なガラス細工のような、不安。


「可愛いわね」
「えっ!?」
「彼は過ごしやすい環境を作り出してくれるから、彼の傍は居心地が良いの。あなたが彼に抱いているような感情は無いわ」
「――っ!!」


はっきり伝えると、彼女は口を噤んで俯いた。
顔を隠そうとしているようだけれど、耳まで真っ赤に染まっているからその行為に大した意味は無い。

 
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